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治療
PM6時を過ぎて、開函場所に向かう寸前の矢内に、電話が入った。新山からだった。
「あ・・御免、急いでるんで。今晩は駄目なんだよ、又ね」
その矢内の電話の言葉が余りに義務的であった為に、早くも新山は戦意喪失したようだ。それは、決して意図したものでは無かったのだが、とにかくその時彼の状況は急いでいたのだ。それだけの事だった。
それは、週明けの女子社員達の会話に上る事になるのだが、今は、矢内も急いでいる。
到着したのは、PM7時前、時間が無く、慌てて矢内は開函場所に飛び込むように入った。すぐ、開函となり、やれやれと一息ついた所に、隣に木村と穴吹と言う学生競翔家が座った。穴吹はめきめきと頭角を現して来た、長髪の学生競翔家だ。
「どうでしたか?矢内さん」
「うん。どうにか、2時半までには、参加の3羽が戻って来たんだ」
「矢内さんは、安定してますね。流石にヤンセン系を使翔されてるから」
「はは・・でも、自分でも血統の事は良く分からないんだよ」
矢内が笑うと、




