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最終章
「ああ、分かっているさ。聞こう」
川上氏が日下部の次の言葉を促した。
「確かに源鳩である、速水蜂号は、素晴らしい鳩だと思う。しかし、その時は既にピークを過ぎていて、その中から直仔である、速水水上号を金石さんは、手許に置いたんだ。100キロから500キロ、そして水上町650キロ競翔で総合優勝しているスピードバードだ。血統書にも出ていたと思うけど」
「ああ・・オール優勝と言う頭抜けた鳩だよね」
「速水さんはその鳩を2代目源鳩として、最後に金石さんに託したんだ。しかし、年若く、既に当時より競翔鳩のバイヤーとして身を立てようとしていた彼には、余りにその鳩達は重かった。授けられた思いが強いから、余計に重圧を感じたんだと思う。そして、速水蜂号直系をブリーダーとして売り出す反面、強く求められて、田丸鳩舎に貸し出す形で水上号は渡ったんだ。その時仲介したのが、私なんだけど・・。思い出すなあ・・あの時の金石さんの泣きそうな顔・・」




