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最終章
「やあ!」
公園で親子が遊ぶ穏やかな日だった。矢内一家は、丁度車で通りかかった川上氏に声を掛けられた。満開のサツキが、花ほころび蝶が舞う気持ちの良い午後だった。
「あ・・わんこ」
大希が、川上氏が子犬を抱えて車から降りて来たのを指差した。
「あ、クンの子ですね?」
「ああ、高橋さんの所から今日頂いて来た」
「可愛い」
動物好きの幸子は、その子犬の頭を撫でると、大希も同じように撫でる。微笑みながら川上氏が、
「もう・・ドンが死んだ時には犬なんて飼うまいって思ったんだけどね」
その言葉に、矢内も大きく頷いた。
「矢内君の所も貰うんだろう?子犬」




