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明日はやって来る
矢内は杯を置いて、香月の顔を凝視している。佐川も、小谷もだ。もう、話の発端は進んでいる。しょうが無い事だと、全員が分かっている。
「矢内さん、隻竜号が何故危険なコースを選択したのか・・それは、隻竜号の左眼の視力が低下しているからです」
「えっ!」
「何だって!」
磯川も声を上げる。
「治療は万全を尽くしました。しかし、生あるものは老います。隻竜号の左眼は老眼が進んでいます。故に、他の2羽より恐怖心は少し希薄だったのかも知れません。それに、それまでの訓練で高められた帰巣本能が勝っていたのかも知れません」
「何と・・老眼・・」
磯川は絶句した。香月は言葉を続けた。




