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隻眼の竜  作者: 白木
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魔窟への誘い

 しかし、例え不可能な推論であろうと、可能性として村岡鉱山跡地に迷い込んだ事の否定は出来ない。何故なら3羽のみ翌日帰りと言う状況は、7千数百羽参加しているGCレースで、全鳩が竜巻に巻き込まれたのでは無い筈だし、同じコースを辿って戻って来たなら、3羽と後続が丸一日も距離が開く事があるだろうか・・磯川は別コースの帰還を考えて居た。しかし、郡上9071号が戻り、黒竜号が戻らないとなると、同じコース帰還は否定となる。矢内の言葉が、もう一度その仮説を揺り動かしたのであった。

 淡い期待・・それは、帰還を望む愛鳩家達の願いであった。磯川、矢内は祈った・・。

 そして、第一報は早朝に磯川から矢内に伝わった。


「え!一際大きな黒い鳩と、他4羽が法皇の滝に居るですって!はい、分かりました、川上さんに連絡します!」


 GCレースの結果を、人一倍心配している川上氏の事を、磯川は知っていた。自分の送り出した鳩の事も勿論であるが、がっくり肩を落としている佐川に対して気遣っていた師であった。

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