816/938
迷路に・・
「あ・はい。有難う御座います」
どうしても、この金石は好きにはなれない。自分とは相容れない要素を多分に持った人物だから・・矢内はそのまま一礼して帰ろうとする。
「まあ、ちょっと話をさせてくれよ、矢内君」
仕方が無いなと言うように、矢内は玄関横の植木の所に立ち止まった。
金石が言う。
「こうして見ると、秋の隻竜号の菊花賞参加は、多いに意味があったと言う事のようだね」
「・・・・」
矢内は特に答えなかった。
「前言・・取り消すよ、矢内君。君の隻竜号は、磯川君と言う天才競翔家がいかに心血を注いで鍛えて来たのか、前に見せて貰った時とは全く今は違うよ。良く分かる」
矢内は、一礼して答えずに帰って行く。




