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次代を担うべき若手
矢内は、佐野の質問に答えた。
「あ、いえ。自分で決めました。隻竜号は300キロレースからスタートします」
「へえ・・・」
佐野が少し目を見張った。
それは、答える矢内の言葉の奥に、自信のようなものを感じたからだ。その自信とは隻竜号の出来なのだろう、佐野は思った。
若手の一人、有名三郎と言う男が言う。
「佐川さん、凄いですね。黒竜号は、紫竜号の再来だって皆が言ってますよ」
参加レース全て優勝を争うタイムで優入賞。その威風堂々の体躯、容姿は当然の如く注目を浴びるに価する。
しかし、紫竜号の現役時代を知らぬ若者が、幾らその鳩を語ろうとも、所詮言葉の賞賛だけに過ぎない。黒竜号が紫竜号の再来と言われる鳩なのか、どうか。




