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沸き起こる激情
「ほう・・隻竜号にそんな変化が?」
「ええ、紫竜号を彷彿とさせるようなあの左眼・・ルビーのような鋭い眼光。以前とは全く違う感じです」
川上氏は黙って頷いていたが、
「佐野君、ここだけの話だがね。君だから言うが、隻竜号の眼の治療には一男君が関わっている。つまり紫竜号と無縁とは思えないんだよ」
「あ・・・」
佐野が思いついたように短い声を発したが、それ以上は言わなかった。
「佐野君、一男君が天才と言われる所以である最大の長所は、純粋無垢なその自然体から発するものだと思う。動物を真っ直ぐに見る眼だ。仮に隻竜号に紫竜号に繋がる何かがあったとしても、私はもう何も言う事は無いだろう。これほどまでにこの鳩を成長させた奇跡をやってのけた訳だから・・」
「はい」




