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隻眼の竜  作者: 白木
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矢内健二と言う男

「はい・・」

「でな、今晩呼んだのは、今度お前を係長に推挙しようと思っている」

「えっ!」

「俺は、お前を無能だとは思っていないよ。派手さは無いが、お前には芯がある。人より多少、のろさはあっても、きっちり仕事をこなせる男さ」


 地味な矢内の努力を、野田は認めてくれようとしている。嬉しい言葉だった。


「野田課長・・有難う御座います」


 リストラ寸前の矢内が、鬼の課長の下で、こうして生真面目でこつこつした努力家である事を認められた。


「ねえ、ねえ、聞いた?矢内が今度係長に昇進なんだって」

「聞いたわ、資材部係長って言ったら、他の部署の課長補佐と同格じゃない。いきなり凄い出世ね」

「今まで冷遇されてたけど、ゴマすりの藤岡や、嫌味たらたらの岡崎とこれで肩を並べた訳よね」

「野田課長の後押しは、強いわよ。次期部長が推すとなれば、これから出世街道じゃない?」


 女性社員の話題は、ある意味正確だ。

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