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治療
この事があってか、色んな人達の働きかけがあってか、この問題は大きくはならなかった。少し先日の事以来精彩を欠いていた佐野だったが、再びいつもの彼に戻っていた。
400キロ後、500キロ郵政大臣杯、ダービーと不参加した事で、矢内は16羽を600キロレースに参加する事となった。
今回の事情を全く知らない若い連中が、矢内の側に集まった。矢内はその人柄で敵を作らない。
「矢内さん、姿を見ないから心配してました。何か狙いがあったんですか?」
「あはは・・何も無い、何も無い。丁度用事もあったんでね」
「でも、今春のダービー等が少し荒れたせいで、むしろこの600キロレースは狙い目ですよね」
小谷が少し遅れてやって来た。川上氏は今日も姿を見せていなかった。
「お・・健ちゃん、狙ってるね、16羽かい?」
「そんな、とんでも無いですよ。兄貴は?」
「23羽だ」




