12/938
序章・・
人は生きて行く上で、様々な環境の中で無数の制約に縛られねばならない。まして、勤め人と言う立場の者は、常に会社組織と言う所に人生の大部分を占める制約を受けている。それは、仕方の無い事かも知れないが、矢内とて例外で有り得る訳が無かった。
帰宅時間は時にはPM11時を過ぎ、しばしば激務が続く。お陰で、身長168センチと小柄ながら以前は80㎏あった体重が、現在は63㎏と、かなりスリムになっている。
そのせいか、全く以前は女子社員の話題に上る事も無かった男だったが、
「ねえねえ、矢内って最近格好良く無くない?」
女子社員がささやく。
「そうよねえ・・以前の白ブタとは大違い。けどさあ、あの野暮ったさは変わんないけど」
「きゃはは、それは、そう」
しかし、以前とは周囲の目が変わりつつあるのも事実であった。
この晩、割りと早めに帰宅した矢内に、一本の電話が掛かって来た。磯川からだった。退院後の経過を聞く磯川。忙しくて、病院にあれから行っていない矢内を心配しての電話だった。




