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序章・・
磯川総合病院に入院して、2ヶ月目を迎えようとしていた。
矢内健二は、ぼんやり窓外を眺めていた。屋上には立派な鳩舎が建ち、無数の鳩が群れている。
「どうですか?」
病室に現れたのは、スレンダーですっきりした顔立ちをした磯川総合病院の跡取り息子で、副院長であり、現内科部長でもある、磯川則哉だった。若先生と呼ばれている。
「あ、若先生。お陰様で随分良くなったような気がします」
カルテを見ながら磯川が、
「・・数値も随分落ち着いたようですし、来週あたりに退院されますかね、矢内さん」
「え!本当ですか。良かった・・。あの、若先生、退院する前に是非飼って居られる鳩を見せて頂けませんか?」
「お安い御用です。それじゃ、明日でも午後なら」