表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の才能ゼロの令嬢に最強ジジイが科学を教えたら?→A.めっちゃ無双する:【才無し侯爵令嬢と魔法ジジイの科学革命】の各話一覧  作者: Koh


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/99

第57話 主席と次席

 翌日の昼下がりのこと。


 居間のテーブルに、三つのコップが並んでいた。グリモワルドはいつもの椅子に深く沈み、ピリカとアリサは向かいに並んで座っている。


 ふと、アリサがコップを置いた。


「あの、お師匠様。前から気になっていたことがあるのですが」


「なんじゃ」


「お師匠様は——正直、お祖父様より強いですし、魔法も遥かにお上手ですよね?」


「そうじゃな」


 即答だった。謙遜のけの字もない。


「で、では、なぜお祖父様が主席で、お師匠様が次席なのでしょうか?」


 グリモワルドはコーヒーを一口啜った。


 ——主席と次席、か。


 少しだけ、遠い目をした。


⸻⸻

⸻⸻


 数十年前。宮廷の一室。


 扉が、勢いよく開いた。


「先生! なぜ私を主席に、グリモワルドを次席にしたんですか!」


 ボルトランだった。若い。髪は黒く、背筋は今と同じくまっすぐで、顔だけが真っ赤だった。


「実力で考えたら、どう考えても逆でしょう!」


 部屋の奥。長机に頬杖をついた美女が、気だるげに顔を上げた。


 金色の長い髪が、机の上に流れている。歳は——わからない。二十代にも、四十代にも見える。宮廷魔法使い主席。二人の先生。


「ボルトー。逆になんでだと思う〜?」


 先生はあくび混じりに言って、部屋の隅へ目をやった。


「あ、グリモ、コーヒー淹れて。3人分」


「ほい」


 壁際の椅子に転がっていたグリモワルドが、寝そべったまま指先を動かした。棚から豆が浮き上がり、空中で赤く光り始める。


 ボルトランは、こめかみを押さえた。


「……お前も! なにか思うところはないのか! 主席の座を俺に取られてるんだぞ!」


「え、とくに……。というか次席も面倒そうでいらないんだが」


「……!?」


「ほらね〜」


 先生が、頬杖のまま笑った。


「この怠惰さ。次席でもギリギリだよ。——ボルトはさー、主席に求められることって何か分かる? いや、本来は次席もなんだけど」


 ボルトランは姿勢を正した。


「……宮廷魔法使いの代表としての顔。後進の育成、教育。新たな魔法の開発。国の戦力の要としての役割——などでしょうか」


「さすがー、よくわかってる」


 先生は、ひらひらと手を振った。


「そんでさ、こいつに"顔"なんてやらせてみなよ。最悪、その日のうちに辞めてどっか他の国に逃げて、悠々自適に暮らしてるよ」


「まぁ、それも悪くないかもしれん」


 コーヒーを淹れながら、グリモワルドが本気の声で言った。ボルトランの額に青筋が浮かんだ。


「な? だからボルト、お前なんだよ。——というか、グリモという例外を除いたら、お前が完全に魔法力一位じゃないか。もう私とも遜色ないだろう? ほんとに何が不満なんだ」


「グリモワルドがいるなら、私は一位ではなく————」


「そのクソ真面目な感じ、さっきの責務をこなせそうな感じはするのう」


「ねー。グリモもそう思うよね」


 先生はくすくす笑って、それから——ふと、何でもない調子で付け加えた。


「それにグリモはさー、たまに変なこと言うだろ? 誰も考えたことないようなさ。私はあれがもっと見たいんだよね」


「……は? 変なこと、ですか?」


「んー、こっちの話」


 先生は頬杖を崩さないまま、窓の外へ目をやった。


「二人を見てるとほんと思うよ。私なんかが主席に座ってるのは勿体無いってね」


「先生——」


「と、いうわけで!」


 先生が、ぱん、と机を叩いて身を起こした。


「来年からは——」


 ボルトランを、ゆるく指差した。


「ボルトが主席」


 次に、壁際でコーヒーを淹れているグリモワルドへ、同じ指をすいっと向けた。


「で、グリモは次席。そんな感じにもう調整してるから。ボルトは全体的に頑張れ。グリモは、強い魔物とか戦争とか——ボルトがほんとに大変そうなときはさ、助けてあげてよ」


「全体的ってなんですか!?」


「仕方ないのう」


「お前も、仕方ないってなんだよ! というか——来年から!? 20代のうちに主席魔法使いに就任なんて、聞いたことありませんよ!?」


「優秀な2人組がいるからね」


 先生は、出来上がったコーヒーを受け取って、満足そうに一口飲んだ。


「早く地位を与えて、早く成長して、早く活躍してもらって——で、私に楽をさせておくれ〜」


⸻⸻

⸻⸻


「お師匠様?」


 ピリカの声で、グリモワルドは目を上げた。二人がこちらを見ていた。


「ふむ」


 グリモワルドはコップを置いた。


「ピリカ、当ててみよ。わしが次席な理由」


「え、私ですか」


 ピリカは、きょとんとした。それから、じっとりした目になった。


「……お師匠様、絶対、主席について回るあれこれをめんどくさがっただけでしょ。代表の挨拶とか、後進の育成とか。むしろ、よく次席なんてやってるなって……」


「かっかっか! さすが、よくわかっておるのう!!」


 隣で、アリサがぽかんと口を開けた。


「そ、そんな理由……」


「さて」


 グリモワルドが立ち上がった。


「今日も庭で訓練とするか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ