プロローグ
蝋燭が数本揺れているだけの薄暗い空間に二人の声が響いた。
「ガハハハハハ!!お前のところにも、ようやく子供が産まれたみたいだなぁ。で、男か!?女か!?」
歳は20代半ばといったところだろうか。豪快に笑ったのは、精悍な顔立ちに、黒い長髪を頭の後で一本に結った体格の良い男だ。
「男の子だとよ。手紙にそう書いてあった。」
もうひとつの声が答える。
こちらの男も負けず劣らず精悍な顔立ちをしているが、右目に二本の傷痕がある。髪は黒く短めで、全体的に逆立ってる。かなり迫力ある顔だか、その顔は息子の誕生で緩みきっている。
「早いとこ依頼を片付けてシモン島に帰ろうぜ。お前も早く産まれた息子に会いたいだろ?なぁ、バッツ」
どうやら、顔に二本傷のある男はバッツというらしい。
「お前だって、イーリスちゃんに早く会いたいんだろうが、ザイ。今年で2歳だったか?」
バッツはニヤニヤと笑いながらザイに聞き返す。
「まぁな。レンにも会いたいし、お前だってサクラちゃんにお土産持って帰るんだろ?」
レンとサクラとは二人の妻のことだろう。
「まぁな。・・・・・ザイ。そろそろ、ヤツが動きだす時間だ。」
「了解。さっさと片付けますか!!」
バッツは大剣を背負い、ザイは鶴翼を身につけて立ち上がる。
鶴翼とは巨大な盾と剣がひとつになった外見をしている攻防一体の武器である。
二人は蝋燭の火を消し、洞穴を出ていく。朝陽を受ける二人の背中は、まさに歴戦のハンターのそれであった。
二人は腕をぶつけ合う。
「狩りの始まりだぁ!!」