せっかくのごちそうなのだから
その日の夕食時。私は、途中で箸が止まってしまった。
「うーん…」
ひとり唸っていると、皿に盛られたエビフライを一尾、秋桜に箸で取られた。
『どうしたの。食べないなら私食べちゃうわよ』
「あーっだめ!それは私の今日のご褒美なの、ちょっとだけいいとこのお店のやつなのー!」
『嘘よ、食べないわ』
秋桜は済ました顔で、皿にエビフライを戻した。私は頬をふくらませる。
「何なのよ、もう」
『今日はなかなか大変だったもんね。明日筋肉痛になっちゃうんじゃない?』
そう言って、向日葵は湿布を探してくれている。
「普段あまり運動しないからね…。もう既に痛んできてる。明日はもっとひどくなるね、きっと」
私は、グラスに注いだチューハイを一口呷った。
『アンタ、お酒あんま飲まない人じゃなかった?』
秋桜が言った。向日葵の方は、湿布がなかなか見つからないのか、あちこちを探し回っていて、私は『いいよ向日葵、ありがとね。後で私が探すよ』と声を掛けた。
「そうなんだけどね、なんか今日は飲みたくなったの。色々考えちゃったし」
氷雨さんも月城さんも、みんな何かを抱えているんだ。氷雨さんの、“あまり気分の良くない話”って何だろう。月城さん、お父さんと何があったんだろう。
月城さん、この前はお父さんに対して『話し方が分からない』って言ってたけど、そういうの、ちょっと分かるんだよなあ。
「反抗したかった、か。…あーもうやめよ。せっかくのエビフライが冷めちゃう」
『そうそう、今は色々考えるのはやめなさい。目の前のエビフライに集中!』
『この揚がり具合のエビフライは、今日だけだよ!』
「ふふっ。はいはい」
秋桜と向日葵が何やら賑やかし隊になったので、私はひとまずご飯に集中した。




