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最強少女の魔法奇譚  作者: 浪崎ユウ
第五章 神徒侵攻編

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54話 天媒とゾンビの神仰

遅くなりましたー!!!!

もう一方の連載も更新できていません。

深くお詫び申し上げます。


 フード付きのパーカーを着た若い女性。

 真横の脇道の角で、ドラム缶の上に座っている。

 通り過ぎかけたアオはスローモーションのように驚きつつ目だけでその姿を追い、足を止める。


 女性は大量の薬が入った瓶を揺らすと、嘲るように、何かを企むように、口角を吊り上げた。





「やあ、嬢ちゃん達!! ヌシらは霖さんの知り合いじゃな??」





 突如聞こえてきたその声に、アオを庇うように前に出る晴華。

 その晴華を片手で押し退けて不快感を露わにするアオ。


 女性の言う“霖さん“とは裏社会では有名な黒薔薇、霖。横浜マフィア頭領である、市川の事だ。


 この街の者ならきっと誰でも───、その名を聞いたことはあるだろう。

 目の前の相手が敵である可能性も考慮しながら、アオは彼女を睨みつけた。



「君の言うとおり、“霖さん“は私の知り合いだ。それよりその薬……君が、この街にいる人々に売っているの??」



 気味の悪い呻き声が絶えず耳を刺す。

 薬物の売買は相手がマフィアであっても国防軍として無視のできない犯罪。

 警戒心を隠さずにアオは彼女に問いかけた。


 すると反対に彼女は、腹を抱えて笑い出す。

 その度に手に持った瓶が揺れ、その中の錠剤がカラカラと音を鳴らした。


 その音や動きは、実に奇妙で、歪。



「ぷっ……あっはっはっはっは!!!」


「君、何を笑って」


「あ"ーっ、はっはっはっ!! こんなに笑ったのは久しぶりじゃ!! もちろん、この薬は違法なものではない。“あーし“用の睡眠導入剤じゃよ!!」



 心底可笑しそうに、独特な口調で明るく言い放つ彼女。

 壊れた機械のようにヒィ〜ッ、と引き笑いを始めるその女性の様子は少なくとも、嘘をついているようには見えない。

 理性と正気のリミッターがぶっ飛んでいる。


 からこそ、内容にさすがのアオや晴華も固まる。



「え、紛らわしっ……」

「睡眠導入剤を常備してるってどういう状況よ……」



 二人が呟いたところで、よっ、とドラム缶から飛び降りるその女性。

 彼女は錠剤を瓶から直接のどに数錠流し込む。そして、引き気味の彼らを無視して手招きをした。



 信用などできない。というより、まだ何者なのか、全く正体が掴めない。

 そんな表情から察したのか、アオと晴華に笑みを浮かべた。



「ヒィ〜ッ、はははっ!! 心配無用。あーしは牙都(ガト)、横浜マフィアの構成員じゃ」


「っはぁ!? ……それ、本当なの??」

「勿論。あーしは嘘はつかんのでな」



 ───こんなにも怪しいやつが??



 訝しみつつも1つため息を吐いたアオ。今のアオは非力で何も知らない彼女ではない。

 もし自分を騙しているなら、実力で淘汰すればいい。そう考え、微かに警戒を解いた。



「それで、これからどこに??」



 静かに訊くと、牙都はパーカーのフードを少しずらして瞳を見せる。

 その目は────、蛇が蜷局(とぐろ)を巻くような深緑色で、人間のそれではなかった。


 加えて彼女からは、アオが出会った事のないような魔力が漏れ出ている。




 ────何にしても。この世界の暇つぶしにはなる。





「案内してやろう。霖さんのところまで、のぉ??」






*****




 大きく長い一本道の先。

 黒くそびえ立つ巨大なビル。100階以上はあるように見える。


 アオが晴華に聞いた話によると、この闇市とも呼べるこの路地の出入口は二箇所しかない。

 一方は彼らが入ってきた花屋。そしてもう一方は、ビルの表側。



 横浜武器工房。以前訪れた分店ではなく、本店のオフィスビル。

 それは横浜マフィアの────拠点である。


 また社会に紛れるよう偽装され自動ドアだった分店とは違い、その入口は何の変哲もない鉄の扉。



 しかし、扉の前に辿り着いた時、牙都の歩みが止まる。

 額からは滝のように冷や汗が流れ、拳は震えている事にアオは気づいた。

 それは扉の前で銃を携帯している黒スーツの者達も同じく、緊張が走っていた。



 まるで生死が関わっているような底知れない、恐怖。



「……入らないの??」



 アオが静かに問いかけると、肩を揺らした牙都。

 瓶の錠剤を一気に飲み込みアオに向かって笑った。



「な、何でもない。入ろう」



 彼女は声を震わせながら二人を中へ招くと、共にエレベーターに乗り込んだ。

 そしてエレベーター内で魔力を込めると、一度勢いよく落ちた感触。鈍い衝撃。

 ボタンのない地下へと降下していく。アオの感じる空気は悪く、嫌な匂いはさらに濃くなっていった。

 


 牙都は軽く鳴る到着音に、ビク、と再び体を震わせる。エレベーターのドアが開いても戸惑っているようにもみえる。

 彼女を通り越し、アオを気にかけながら先へと進む晴華だった。しかしアオは牙都を振り返り気になっていたことを聞いてみることにする。



「牙都。何をそこまで怖がってるの? 仮にもマフィアの構成員なんだよね??」


「あ、あーしは怖がってなどいない。あーしは………」



 俯いて何かを言いかけたとき、長い影が落ちる。

 心臓を凍り、体を刺すような殺気が室内を満たしていた。冷ややかな声。




「お前、こんな場所で何の話をしているのです??」




「っ!!!! 霖さん…………っ!!」



 青ざめて完全に硬直している。怯えていたのは霖、もとい市川に対してなのだろう。

 市川の秀麗な容姿がその冷徹さを惹き立てていた。



「市川──いや、えっと」


「ここではどうぞ霖とお呼びください。アオさん」



 彼の雰囲気は一切変わらないまま、しかし丁寧に目を閉じた。

 市川は乱れのない黒スーツ姿ではなく、緩めたシャツにベストを着ていて腰のホルスターには数丁の拳銃を差していた。

 普段はシャツで隠されている首の“黒薔薇“のタトゥーが今ではよく見える。


 顔や服に血液が付着しているが、彼自身に傷はない。つまり、返り血だ。




「じゃあ霖。前の戦いでは助かった、感謝する。

それと…………この、牙都って子は一体??」


「あっ、そうじゃ霖さん!! ヌシの頼み通り案内役を務めてやったのじゃ。ほれ、この薬の補充を」



 カチャ。響いた撃鉄。


 目で追う暇もない。ホルスターから拳銃を取り出し彼女に突き付けていた。

 冗談などではなくこの男は、息をするように引き鉄を引く事ができる男である。アオは様子を見守る。





「アオさんがいらっしゃる。俺の気が変わらないうちに失せろ、牙都」





「っ承知………!!」



 慌てた様子で足を退げると再度エレベーターに乗って姿を消す牙都。アオが異質な魔力を感じ取った彼女だが、脱兎のようにこの場から逃げ出していた。

 見届けると、市川が口を開いた。




「俺の知り合いが申し訳ない。アオさん、霧山秘書。教育が足りないようで……ガキが生意気な口を。

彼女はマフィアの協力者で情報源なのですが、正式な部下ではないのですよ」

 

「こちらこそ突然押しかけてごめんなさいね、霖」




 軽く謝罪をする市川に晴華が答えた。

 市川の言葉に疑問を覚えるアオ。



────子供には優しげな対応をする事が多いのに。牙都は過去に何をしでかしたというのか。



 この張り詰めた空気に変化はない。他の何よりも黒く平坦な彼の瞳に、アオは再び思い出す。

 これはマフィアの頭領である市川の姿なのだ、と。



「さて。お二方は王女に脅迫状を出したという、“教祖“についての情報を聞きたいので??」


「うん、そうだよ。教えてくれる??」


「本来ならば契約の二つや三つ受けて頂くような情報ですが……構いません。この者共から聞き出した情報ですから」



 地下の薄暗く鉄骨で造られた冷たい廊下を歩きながらそう話し、市川は下の方に目線を落とす。

 つられて目線を落としたアオと晴華は顔に出さないものの、目を少しだけ見開いた。




「……最近は牢屋をよく見るね」




 ズレた事を一人で呟いたアオはその凄惨な光景にも顔色を変えずに牢屋に近づく。

 牢屋────というよりは、尋問室。

 その中で死体のように虚な瞳の彼らを、アオは以前見た事がある。



 ────名前、何だっけ。



 戸惑っている様子のアオに紹介する形で、牢の鍵を開き、その中に足を踏み出した市川。




「こちらは天原木月と天原宗隆。随分と裏社会に詳しいようなので、ここに捕え事情を伺っていたのです」




 名前を出されて初めて思い出し表情が明るくなる。




「ああ!! 神月の両親か!! 随分と酷い目に遭ってるみたいで……」


「何か??」

「いや、何も」


「……無駄話も必要ありませんね。先に重要な箇所をお伝えしましょうか」




 言葉を区切った彼は、牢屋の二人を空気のように無視してアオ達に向き直った。



「話によると、拠点(アジト)は長野県近辺。

教祖と名乗る者が所属しているのは、“ルクシス天媒会(てんばいかい)“という宗教団体で、教祖はアキという男。

何でも、アポロンと呼ばれる神を信仰しているのだとか」



 名を聞いた時、アオの表情は驚愕に染まる。

 話の途中に割り込んで市川に聞いた。



「ちょっと待った。アポロンって、もしや神王の……!?」


「神王、かは存じ上げませんが、神の中では上位の存在と教えられているそうです。続きを話しても??」


「ええ、もちろん」




 目を逸らすアオに代わり、晴華が返答した。明らかにアポロンという名前に聞き覚えがある様子。

 彼女を宥めながら続きを促した。



「その宗教団体ですが、王女に脅迫状を送ったというだけなら俺達が排除するのは容易でしょう。

しかし、問題がありまして。その天媒会(てんばいかい)は、───日本全国に、怪しげな薬物をばら撒いているという情報があるのです」


「それが、この街にも……だからマフィアが動くのか」



「はい。そしてその薬はこう呼ばれているそうです。




 “ゾンビ“  と」






*****




「で、オレ達は今どこへ向かってんだ??」


 本を片手に愚痴を言うのは神月。前方には第四部隊隊長の時薪と、助手席に千草が乗車している。



「口の利き方がなっていないな、減給してやろうか?」


「はぁ!? 部隊の違うお前にそんな権限……」

「冗談はさておき」



 いまの冗談だったのか?? と苦笑する千草を黙殺すると、時薪は車を停める。

 そこは大勢の人も行き来する、広く清潔な建物。

 ポケットに手を入れたまま感心したように神月が呟く。




「総合、病院か……??」




「そうだ。依頼の前に少し寄りたくてな……そうだろ?? 千草」


「ああ、そうです。天原、ここは俺の母と妹が住ませてもらっててる病院なんだ」


「お前……家族が、病気だったの??」



 神月なりに言葉を選んでいるんだろう。遠慮がちに千草に問いかけた。



「まぁな、でも、昔からだ。父親は記憶にないんだけど、母と妹達は一緒に暮らしてた。母の病態が悪くなると、南本さんや碧に支援してもらって、なんとか治療を受けていて。

妹達は、以前、江山と黒滝に家を燃やされた時、火傷しててさ。それも同時に」


「そんなつまんねぇ事してたのか、あいつら」


「ああ、ダサいよな。でも俺も小さい頃、不良グループ“ゾンビ“とか言って貴族狩りをしててさ。

誰かを傷つけるって面では……それほど変わんねえよ」



 懐かしむような、後悔するような口調。

 神月は口を噤むと普段の馬鹿にするような表情で笑った。



「お前もオレもまだガキじゃん。小さい頃とか、どれだけだよ」


「は、うるせえよ!? 人が真面目に話してんのに!!」



「おいくそガキ共。喧嘩するなら置いていくが??」




 時薪の眼鏡の奥から怒気のような者が見えてしまった二人は、慌てて姿勢を正し、彼の後を追いかけた。

 数年ぶりに会う事のできる、家族。

 千草は神月と口論しつつも心の底から楽しみで仕方なかった。



 そんな彼らの様子を見ながら、時薪は眼鏡を触った。彼の眉が微かに顰められる。


(やはり信じられない。千草界は……訓練生から上がったばかりのたたの生意気な子供じゃないか。それが)





「王族の血縁かもしれない、だって?」






お読みくださりありがとうございました!!

面白いと感じて頂けたら評価ブクマ、感想✨✨

一言でも!!私は感想を求めています。


どうぞこれからも宜しくお願いします。

では良いお年を〜〜!!!




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