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最強少女の魔法奇譚  作者: 浪崎ユウ
第五章 神徒侵攻編

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53話 闇の街に棲む者

第五章 神徒侵攻編 開幕です!!

どうぞこれからもお楽しみください。


 地下牢から釈放されたは良いものの、未だ監視付きでアオは、待機を命じられた。



 そして、その数日の間で様々な事があった。



 まず、重傷を負い救護班に送られた植田と兼得が目を覚ましたのだ。

 アオが見舞いに行く事は叶わなかったが、クラスの皆が訪れた際は、それはもう感動の再会のような有り様だったらしい。


 以前と同じく鈴能が魔法を使い、救護班と共に治癒に協力したとの事だった。短時間でほぼ全快させたために治療における彼女の貢献度は素晴らしいものである。

 これにて一件落着、と思えたが、未だ消息を絶っている隊員もそれなりにいるので、一概に良かった時は言えないのが現状だ。



 次に、此度のフォラウス襲撃時の活躍により、入隊者が増えた。入隊試験を免除し、活躍者を優先的に入隊させたからだ。


 決定打となったアオは、神級魔王から神級魔法師と改められ、訓練生であった神月、千草は正隊員となる。



 他にも、兼得、有崎、鈴能の入隊が決定。

 学校と並行して仕事をするそうだ。


 国防軍の隊員、特にその幹部クラスには貴族に等しい階級を与えられるため、一般市民にとっては最高の職業とされているのだ。





 そして他にも。アオに伝えられた連絡事項。

 次の任務────王女の護衛任務について。





 個室。

 国防軍の蔵書を読み漁っているアオ。机には紅茶とクッキーが置かれている。監視されている身とはとても思えない程に寛いでいた。

 監視役の隊員が、詳細を伝えようと口を開く。


 しかしその隊員は市川ではない。第零部隊に所属する一人。彼女自身が魔王とまでは知らされていない代わりに、危険人物だと教えられ、監査を任された隊員だった。



「────今回この依頼に参加する隊員は、碧隊長、市川隊員、天原隊員、千草隊員、時薪隊員、そして霧山秘書の六名です!! 王女との謁見の前に、まずは霧山秘書と情報収集のために横浜へ向かえとの指令がありました」


 隊員の名を聞いた時、アオはむせて咳き込み、眉を寄せた不快な表情。



「は!? 霧山秘書って霧山晴華……!?」




 ───隙あらば猫撫で声で抱きついてくるあの秘書と共同任務か……憂鬱だ。



 アオは神月と千草同様、魔高を休学して依頼を遂行する予定となる。彼女の場合は元々潜入捜査という名目なので、どちらも仕事ではあるが。


「てか時薪まで?? 隊長でしょ? 他の仕事は?」


「は、はい。万が一のためだと仰っていましたが……」



 不機嫌にジト目をするアオ。

 無意識に魔力が漏れ出ているため、隊員達を震え上がらせている。



「………何が万が一だ。どうせ鬼谷が霧山晴華に押し切られたんでしょ……フォラウスの処遇は?」


「う、漆原隊長の元で人体ならぬ悪魔実験……いえ、使われているそうです!!」


「ははっ、あいつ実験材料じゃん」

「はぁ……」



 可笑しそうに笑うアオに、何と反応して良いのかわからない隊員は困ったように呟いた。

 微妙な空気が流れるなか、思い出したようにそちらを振り向くアオ。



「そうだ、聞き忘れてた。その王女を狙ってるって、何か被害があったってことなの??」



 ギィ、と扉の開く音と共に、男が入室。側の隊員の代わりに答えた。



「………“教祖“と名乗る輩から、王女に脅迫状が届いたんだ。俺達の仲間になれ、拒否すれば神の名においてお前は殺されるだろう、とな」


「時薪!! それはまた、大胆だね……教祖ってのも引っかかるけど……」


「ああ。だからその詳細を調べに行くんだ、横浜へ」


「どういうこと??」



 理解できずに首を傾げると、時薪は軽く笑う。



「日本国全国の情報………それは国防軍だけじゃ管理しきれない膨大な量だ。でも、それを可能にするために、裏に関わる第零部隊があるんだろう??」



「あっ………!!!!」



 繋がったようで、混乱する監視役の隊員を他所に、アオも彼と同じように笑顔を見せる。





 そう。その組織は────“横浜マフィア“。 






*****





 翌日の夕暮れ。車に乗りアオ達が向かうのは、神奈川A4地区。昔は伊勢佐木と呼ばれる町だったらしい。

 栄えているようで様々な飲食店や施設が建ち並び、空は薄暗くなっていくのに、とても明るい。



「おおっ、良い町じゃん!! ……君がいなければだけど」



 隣に、というより密着しているスーツ姿の女性。

 きつめの香水の香りがアオの鼻につく。



 その女性────霧山晴華は、いわゆるモデル体型であり、それは男女問わず多くの者が目を疑い、魅了される。


 彼女の、性格を知らなければの話だが。




「あーもぅ、可愛い!! ほっぺ柔らかい!! ちっちゃい!! 目くりくりしてる!!」


「うるっさい、やめっ、ちょっとやめて。前、前見て!!」



 アオに“霧山“という苗字を与えた、戸籍上の義姉。

 明らかに嫌がっている様子のアオにもお構いなし。とにかく触りまくっていた。



 ───だから彼女とは来たくなかったのに。



 実は今、いつも運転手の代わりをしてくれる市川が不在のため、晴華が運転しているのだが。


 ……運転がとても危なっかしい。

 この依頼本当に大丈夫なのだろうか、と感じつつも、車が急停止して到着した事でフロントに頭をぶつける。




「痛っ!!!」


「ああっ、碧ちゃん平気?? 絆創膏いる!?」


「要らないから早く降りて……」




 頭を手で抑え、怒りを我慢しながら呟いた。


 車を降りた先は行き止まり。ただ古びた花屋があるだけだ。

 場所を間違えたのか、と呆れながら晴華を向くと、彼女は花屋の男の前に立つ。





「………お客さん、どんな花をお探しで??」





 男は持っている花の茎を丁寧に切り落としながら、俯いたまま尋ねる。

 その問いに、晴華は慣れたように答えた。



「黒い薔薇を一本、買いましょう」



 彼女がそう言った途端、男はびくりと肩を揺らす。聞き覚えのある声だったからか、それともその言葉の持つ意味を思ってなのか。

 彼はゆっくりと目を開けて、二人を見据える。



「久しいな、霧山さん。車はそのままでいいぜ。

そこのガキは……どうするつもりか知らないが、ウチはガキの扱いには厳しいからな?? 精々目をつけられないようにするんだな」



 そう何も映さない瞳で笑うと、花屋の男は持っていた花を上に振る。



「わっ!!」



 思わず声を漏らしたアオ。

 花屋の男の斜め背後。先程まで壁があっただけの場所に、幾何学的な光が走り、自動ドアのようなものが現れたのだ。







「気をつけろよ、ガキ。この先は裏の横浜だ」







 小さい路地はあれど、そこは大きな一本道。どんよりと重い空気がアオ達の体を押し潰そうとしてくる。





 踏み出した先には────大勢の人がいた。





 ……いや、違う。人の筈の彼らは道の端で蹲り、何かを呻き、発狂し、泣き叫ぶ。

 そのような人の声以外は静まり返っていて、話し声は一切聞こえない。




 夜店の蛍光灯が瞬き、無感情な目をしたドレス姿の女性が看板を持って立っている。


 煙草の匂いに加えて怪しげな煙が立ち込めていて、如何にも人体に有毒な甘い香りがしてくる。

 幸い、晴華もアオも毒物系統は効かないので、その道の中央を歩き続けることができた。




 と、その時。

 いきなり足を掴まれるアオ。

 下を見ると、ボロボロに破れた服を着た男が縋りついている。




「何を……」


「────れ、くれ、薬をくれ!! あの薬を!!」



「……っはあ?? そんなの、知らないけど??」



 車内で少々ストレスが溜まったのだろう。ほんの少し怒気を込めて振り払うと、男は大袈裟に倒れ、また道の端で泣き始める。




「何なの……ここ……」

「碧ちゃん怪我してない!? 大丈夫!?」


「いや大丈夫だって、てか魔王を心配されてもな……」



 心配してくる晴華にボソリと呟いて、先程の女性を一瞥すると、再び歩き出す。



 すると今度は、次は軽快な声が耳に届いた。

 真横の脇道の角で、落書きの多いドラム缶の上に座る、若い女性。

 フード付きのパーカーを着ていて顔は不明瞭だが、十代かそこらだろう。


 彼女は、手に持つ大量の薬が入った瓶をカラン、と鳴らすと、怪しげに、アオと晴華に声をかける。




「やあ、嬢ちゃん達!! ヌシらは霖さんの知り合いじゃな??」





もし面白いと感じて頂けたら感想、評価ブクマ(^^)

リアクションだけでも、とても光栄です!!


次回の更新は今月中……のはずです。

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