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最強少女の魔法奇譚  作者: 浪崎ユウ
第二章 東京都立魔法高等学園編
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第一章25話 心ゆくままに



「汝の願いを聞き入れたまえっ、水魔法《水砲(ウォルバロス)》!!」



有崎が天原に向けて魔法を放つ。

彼はつまらなさそうに眉をあげた。



「個人魔法を使った気配がしたが…変わり映えがしねぇな、お前」




先ほどと同じように炎魔法を発動して爆発を起こさせる天原。しかし、畳み掛けるように有崎が震えた声でもう一度唱えた。



「な、汝の願いを聞き入れたまえ、《水砲(ウォルバロス)》!」


同じ魔法。しかし、違和感。

眩い光を放ち渦を巻いたかと思うと、魔法陣が2つ重なって浮かび上がった。


「チッ、、何度やっても同じだと…」


「汝の願いを聞き入れたまえ、《水砲(ウォルバロス)》!」


「《水砲(ウォルバロス)》!!」


4枚の魔法陣。


「《水砲(ウォルバロス)》!!」


16枚の魔法陣。


「まさか…」


天原が絶句したように目を見開く。その瞳には期待が映っているようにも見える。


「《水砲(ウォルバロス)》!!」


256枚。


「《水砲(ウォルバロス)》!!!!」


数え切れないほどの魔法陣が重なり、一枚通るごとに魔法の威力が格段に上がっているのがわかる。その一枚一枚には繊細な模様が施され、丁寧に構築されている。



「…ここまでの個人魔法、隠し持ってやがったのか!!!??」



「よ、避けてくださいぃ!!」



手を構えたまま大粒の涙で顔を汚した有崎が悲痛な叫びをあげる。


「私、これ制御できませんっ!!!」



「クソ、、仕方ねぇな…!?炎魔法!!」



次の瞬間、天原が()()()()()()()()杖を取り出し、炎を迸らせる。彼の魔法が、有崎の魔法陣の外縁部を正確に焼き切る。


硝子が割れたような軽い破裂音とともに、有崎の魔法陣がキラキラと光に反射しながら崩れ去っていく。


「制御できねぇ魔法を撃つなっての…。

だが、多重結界を作る個人魔法、ね…。悪くねぇ才能だな」


呆れたように言いながらも、天原の口元には笑みが浮かんでいた。


「なんで今まで使わなかった?」


「制御ができなくて…みんなを傷つけてしまう、かと…おこがましい、ですよね」


有崎は汗と涙でぐしゃぐしゃに顔を上げ、歪に口角を持ち上げる。


「あっ、りがとう、ございました…」


「甘ぇよ……あ」


天原は満足そうに呟き、何かに気がつく。

ふいに、彼女の頭に手が置かれた。


「へ?」


視界が揺れたかと思うと有崎は眠るように床に落ちた。


「時間稼ぎ、ご苦労様、有崎…。

始めよう、天原。後は君だけだよ」


有崎の隣に立ったアオは期待を含みつつどこか冷たい眼差しで、天原へと向かい合った。






*****






「まさか一対一になるとはね…」



外野で見ている植田が呆れたように溢す。


「なんなんだよ、千草も有崎も!?

俺らなんの役にも立ってないぜ!?」


「そりゃそうだよ、下民はそんなこともわからないの?これが、才能の違いってやつ」


同じ外野で、目覚めた星野が皮肉っぽく広夜麻に言い、向き合う2人に視線を戻した。




2人の間には、もはや誰も入り込めない緊張が張り詰めていた。天原は静かに息を吐き、アオの眼差しを真っ直ぐに受け止める。




沈黙が空間を支配する。




アオと天原は同時に踏み込んだ。



ーー魔力はあまり残ってない、けど!!



一瞬足を止めたかと思うと、回転をかける。魔力が満ちるその手には、彼女には長く、しかし彼女と似て神秘的な杖が握られた。


「…少しだけでいい…」


アオはそう呟くと、足を前にだして紡ぐ。


「《魔力弾》!!」


杖の先に魔力が溜まっていくのを感じる。

いままでの十分の1は魔力を抑えたはずなのに、杖によって増幅されているのがわかる。高濃度の魔力は目に見えないほどの速度で放出され天原に届く。


不可避。普通はそう直感する。


しかし放たれたそれを彼は最低限の動きで回避し、アオに接近した。


いや、回避ではない。

避けるように体を傾けたと同時に、杖を軽く振っていたのだ。


結果、魔力弾ごと、消滅した。


「何が…っ!?」


アオに混乱が襲う。


これまで防がれたり、避けられたりしたことは何度かあるが、今回は綺麗さっぱり消滅させられた。しかも最低限に手加減しているとはいえ、杖で強化した魔力弾を、いとも簡単に。


そんなことは天原が初めてだった。

この日初めて、彼女の慢心が崩れ去る。



ーー甘く見ていた。この、私が。



アオは認識を改めた。

静かに後退しながら彼女は天原を観察する。


「その魔力は、それだけで脅威。だけど魔力量が足りなくても対処はできる。

退屈しのぎぐらいはなってもらわねぇとな?」


天原が軽く煽るように語った言葉に、


「…はは、私のセリフだよ」


杖を構え直し、そう返した。



ーーさっきのは間違いなく個人魔法。今日の昼前に会った時も、何らかの魔法で姿を消した…。



「試すしかない、な…」


彼女は“風を纏い”、駆ける。そうやって自身の位置を曖昧にしながら数十個の魔力弾を多方面から撃ちまくった。


天原はその全てを正確に消していく。



ーー視界が開けたまま戦うのは、不利だ。



「光魔法」


少しの反動を体に感じながら、アオが繰り出し、明かりを眩く照らす。


その隙にと杖を構えるが、


「個人魔法を使う気はねぇってか…。

んじゃ、次オレの番な。

闇魔法…」


彼は基礎魔法の1つ、闇魔法を発動する。

光と、真逆の性質を持つ。

身構えた矢先、視界が奪われた。


突然の出来事にほんの少し動揺するが、アオは冷静に状況を分析する。






*****






教師2人は、戦いを見逃してしまわぬよう、必死に目で姿を追う。



「コレが、A組の、いや、学年最強と噂される生徒の力か…恐ろしいな…。

車谷先生、彼は、何者なんです…?」


駒井が呟くと、車谷は、微かに微笑む。


「天原くんは、天才なんです」


「いや、それは見ればわかるが」


「彼自身、魔力がそこまで高いわけじゃない。しかし、彼は相手を自分の有利な駒まで誘導する…まるで、チェスのように」


「チェス」


その言葉を反芻した。


「天原くんの特技は、魔力の操作と、類稀なる洞察力。数手先まで読んで、実行する。だから強い」


そこで一度言葉を切る。

駒井は目の前の戦いを見つめ、乾いた喉を鳴らした。


「しかし授業には滅多に来ない男が、これほどとは、、。サボりの神も伊達じゃないですね」


「ええ。僕も入試以来、彼の実戦は初めて見ます。…しかしこれは、模擬戦の域を超えていますね。

こんな魔法、闇魔法にはありませんよ」


駒井は、大きく息を吐いた。


外野では目が覚めたA組とB組の面々が、ある者は好奇の眼差しを、ある者は恐怖を浮かべ、試合を見守っていた。






*****






激しい攻防を続ける、アオと天原。

時間だけが刻々と過ぎていく。



「まずいな…」



アオは暗闇の中、構える。



なぜまずいのか。



ーー天原神月は、魔力の流れを読み取り、制御する力が長けている…たぶん私よりも。視界を奪われて身動きが取りにくい私とは逆に、あいつは私の居場所を把握できてるんだろう…。



「私が、誘導された…!!」


そう辿り着くと、目の前には天原の姿。

アオはもろに魔力弾を喰らった。

同時に視界が晴れ、明るさが戻る。


「おい霧山さん、やばくねぇか!!?」

「碧が、傷を負ったってのか!」


広夜麻と千草が身を乗り出して叫ぶのが遠く聞こえる。


「わかった、そうだね、そうだよ…はは」


受け身を取った体をゆっくりと持ち上げながら、彼女は、笑みを浮かべていた。


心から楽しんでいるその笑顔。


そんな彼女を驚いたように、面白そうに天原は目を見張る。


「ちょっとだけ、本気でいくよ?」


魔力の解放。


体育館に衝撃が走り、空気が重くなる。

生徒の中には気分が悪くなる者や失神する者もで始めているがお構い無しに。



ーーいままでの戦いで半分以上魔力を消費している…残りは、4分の1ぐらいか。



解放した魔力を見に纏った。



(これで、消耗してんのかよ…)


天原の表情が引き攣る。まるで、バケモノと対峙したかのような感覚に襲われる。


(オレは、コレより弱い)


「いや、卒倒しないだけマシ、か」


天原は、静かに、杖を構えた。



「個人魔法…創造魔法、《空想家(クリエイター)



彼の雰囲気が変わる。


「さっきの」


一言呟く。


それだけで天原の周囲には無数の魔力弾が現れる。彼には到底、魔力が及ばないほどの濃度。


「これは、私の魔力…!!」



ーー転移、それとも空間操作系?

〈天原がどこからともなく杖を取り出しー〉

有崎と戦う時、杖は突如天原の手にあった。

まるでその場で造られたかのように…。

個人魔法が複数?それはない。だとしたら。



「もしかして、君…」


自身が天原に放った魔力弾をそのまま返され、シールドで防御しながら考えをまとめる。



「大当たり」



「《多重結界》、《魔力増幅》、《吸収》、《放出》、そんで《雷雲》…」



ぶつぶつと呟きながら、多数の魔法を同時に展開していく。もちろん全て、基礎魔法ではなく、全く別のーー。



「隠し切りたかったけど仕方ねぇ…。面倒になってきたところだしね……正直、ここまで全力を出さなきゃいけなくなるとは思わなかったよ…」



アオは全てを捌ききれずに床に打ち付けられるが、即座に起き上がる。


「私も計算外だよ…!」


「オレの個人魔法は《空想家(クリエイター)》…。オレの思った通り、願ったものを創り上げる。魔法でさえも、ね」


「やっぱりか…さすが、特課の天才」


いち早く駆け抜け背後に回ると、さらに大きい魔力弾を天原に撃ち込む。



「どーも」



彼はそれを軽く避け、真剣にアオを見た。



ーー避けた。

創り出した魔法には制限がかかる。圧倒的な魔力に対応しきれていない。



可笑しいように、納得したようにアオが噴き出す。



「はは、ははははは!!!なるほど!!!そういうことか!!!」


「なら、私のできる最大限で…!」


「そりゃあ、楽しみだなっ…」


表情が変化したわけではないが天原の声はどこか嬉しそうに聞こえた。


「あははっ」


アオは、言葉で言い表せない程の高揚感に包まれていた。


天原の猛攻を躱し、相殺しながら彼女は嗤い、思いを馳せる。




ーー3年前は、少しだけ、ほんの少しだけだけど、戦うことを恐怖していた。




舞うように大胆に、魔法を繰り出していく。

それを天原が吸収、放出する応酬。




ーー私の本質が、力が守らなきゃいけない誰かを傷つけるのを恐れていた。そのために、強くなろうとした……今は、違う。




アオと天原の視線が交差する。2人は、距離を取って同じように好戦的な笑みを浮かべていた。


衝突音が響き渡り、煙が立ち上るなかで、白い髪が美しく靡く。天高く杖を掲げ、真っ直ぐ前に突き出し、魔力を込める。杖は神々しく輝き、まさに神級魔導具に相応しい。



その杖は、アオを()()()()()()()()



指先が熱い。体が痺れる。全身を巡る魔力が、今までにないほど滑らかに流れていく。



ーーなにを守るためじゃない。怯えもない。力を誇るわけでも、強さを求めるのでもなく……今は。




「わかってくれるかなぁ?天原神月…、

私はいま、最高に気分がいい…!!」




ーーこれが、私だ。



歓喜、興奮、そして狂気。

混ざり合った感情がアオの強さを増幅する。



「同感したくは、ねぇけどな…」



天原はアオの変化を感じ、戦慄した。


彼女は天井に届くほどの、巨大な魔法陣を創り出した。紫電が走る。



「《魔力弾・極式》…!!!」


「創造魔法…!!」



アオのアレンジが加わった、桁違いの魔力量を込めた、絶対破壊の弾丸と、異質な個人魔法が一気に衝突。



「生徒全員、退避しろ!!!

今すぐに体育館から出るんだ!!!!」


「それなら俺がやります!」


戸惑う生徒の中、千草が名乗りを上げる。








次の瞬間、








音が消えた。







アオと天原の魔力が交わる刹那、空間そのものが軋むような感覚だけが広がった。





壮絶な衝突音と爆発音が響き渡る。





体育館の壁が崩れ落ち、天井が吹き飛ぶ。とてつもない熱風と魔力の奔流が、全てを薙ぎ払った。



砂埃が立ち込める廃墟に、2人の影が立っている。



「まだ、立ってんのか」


「当然」


「やっぱお前…、本当に面白いよ!!!」


天原はもう一度魔力を込め直し、


「はは!!いいね、君!!!」


美しい青色は暗く濁り、その白い髪が一層に際立つ。アオも倣うように魔力を込めた。


「オレが、勝ってみせる…」



その時、黒い奔流がアオと天原を分断する。

それがすぐに烏の大群だと気づかないほどには、2人とも冷静さを失っていた。



「試合、中断!!!!!!

霧山、天原は引き分けだ!よって今回のクラス合同、模擬戦は引き分けとする!!!」



「はぁ…!!??」



アオが殺意の籠った声で、中央に立って宣言した駒井に凄む。


呼吸が荒い。アオは自分が思ったよりも戦いに夢中になっていたことに気がついた。


すると、烏の大群を操ったらしい車谷がアオの前に進み出た。


「殺す気ですか」


「何を…!?」


「千草くんが魔法を使って我々を外に逃していなければ、全員、死んでいましたよ」


「え…」


言葉が出せずに、アオが絶句する。視線だけで千草を見ると、彼は目を逸らした。


それを見てしまった天原が彼にしては珍しく困ったように目を泳がせてから、アオに手を置いた。


「まぁ、うん、そう落ち込むなって。

久しぶりに良いもんが」


「あなたもですよ、天原くん」


「うわ、まじかよ」


面倒くさい、とありありと表情に出ている。


「授業は終わりです。駒井先生、後はお願いできますか」


「ああ、しっかり授業を締めておく」


「あなたたち2人は、僕についてきてください」


にこやかな笑顔で有無を言わさず連行され、アオと天原は不服そうに彼に倣った。



ーーちょっとやりすぎたかもな。



「碧」


そう呼ぶ声に立ち止まり振り返る。


「後で、校門で落ち合おう」


「りょーかい」


千草と言葉を交わし、車谷の後を追った。






*****






それから30分ほど、職員室で注意を受け、叱られ、体育館の弁償を求められた。


アオが咄嗟にそして強制的に市川をその場へ呼び出し、金額の部分は事なきを得た。


疲れ果てた顔で、職員室を出る。


「あんなに言われなくてもわかるっつーの、

あの能無し共…」


「そんな事言っちゃうんだ、私、先生に告げ口しようかな」


「黙れ戦闘狂」


「ごめんって」


そんな掛け合いを何か暗い顔で流し見る市川。アオたちは校門に着き、千草を見つける。


「遅かったな」


「仕方ないよ。説教受けてたし」



表情に気が付き、アオは市川に問う。



「どうしたの?そんな暗い顔して」


「いえ、しかし、ここでは…」


市川は戸惑ったようにちらりと天原を見る。

アオはその意味を理解して、天原を向いた。


「ねぇ、君さ」


「何だ?つまらない事なら殴り飛ばすよ」


「国防軍に入る気はない?」


「は…?ちょ、っと待て。それ、どういう意味?いやということはお前は…」


「察しが早いね、界と違って」


「余計な事言うんじゃねえ。てか俺が他の生徒を助けてやったんだからな?」


千草が口を挟むが、無視してアオは続ける。


「私は国防軍の隊員。それも上の方の立場を持ってる」


「俺、初耳だけど、それ」


「もし君が望むなら、望まなくても、私は君を国防軍に推薦しようと思ってる。あ、今すぐに結論を出す必要はないから。ご両親の了解とか、色々あるだろうし」


優しく微笑むアオを見て、天原は自嘲的に笑った。


「そんなもん、要らねえよ。で?メリットは?」


「うっざ、クソ貴族」


「お前、なんでオレの事嫌ってんの??

話戻すけど、何かに勧誘する時はメリットが必要だとオレは思ってる。何も提示できないってんなら…」


「寮もあって訓練場もある。3食付きで訓練生でも給料は弾む。私と同じ部隊に入ってくれるならもっと優遇できるはずだ」


流れるように口にされた魅力的な提案に、天原が揺れた。


「オレは…人と馴染むのは得意じゃない。人を率先して守りたいとも思わない。それでも、入れると思うか?」


少し驚いたように顔を合わせるアオと千草。


そこで、市川が目を伏せて語る。


「俺のような人間もいるのです。図体も小さく年端もいかずに実践経験のないガキ1人ぐらい、何の問題もありません」


「貶してるのか励ましてるのかわからないんだけど」


「もちろん励ましていますよ、アオさん」


無表情のままそう答える市川。

天原は不器用な笑みを浮かべて、返答した。


「じゃあ…お言葉に甘えさせてもらう。

つーか、千草もそうなのかよ?」


「まだ仮入隊だけどね。天原、今日空いてる?」


「空いてる、けど…ってこのまま行く気かよ」


「やっぱり界より勘がいい」


「うるせえっつってんだよアホ」


「ってことで運転して、市川」




突然の命令に、ため息をついた。




「承知しました…皆さん、速やかに乗っていただけますか」






*****





「そういえばさっき市川、何を伝えようとしてたの?何かあったって認識でいい?」



市川は言いづらそうに顔を顰めてから、静かに話す。



「今日、3年前に捕虜として捕まえた鬼人・焔と、昨日事情聴取を受けさせた黒滝、江山、吉川の3人が…、何者かに攫われました」



アオはほんの少し目を開き、千草はヒュッ、と喉を鳴らした。



「あいつらが…なんで…?」



「たしか、その名前…B組の生徒じゃねぇのかよ?」



「君の言うとおりだよ、天原。鬼人だけならまだ理解できる。だけどその3人が攫われたってのは…何かが、繋がってるはずだ」


「現在、鬼人の研究をしていた漆原の元に、隊長が集まっているそうです。アオさんも参加しますか?」


「うん。そうだね。あとこの2人も」


「承知しました」


「「え」」



2人は硬直し、ワンテンポ遅れて叫ぶ。



「はぁ!?てめぇ何言ってんだよ!?隊長だぜ、隊長!?ただの隊員が行っていいわけないだろ!!?」


「なんでそこの執事も簡単に納得してんだよ、千草はまだしもオレはまじで関係ねぇだろ」


「うるさ」


アオは前方座席で耳を塞いだ。


「静かにしてくださいませんか?アオさんが嫌がっているので」


市川も騒がしいのは苦手なのか、不機嫌な声色で注意する。気に食わないのか、天原が座席を乗り出して呆れたような表情で市川を見る。



「お前が“承知しました”とか言うからだろ。執事ならそういうの止めろよ?」



「お言葉ですが、俺は執事ではありませんので、そういった忠告は業務外です」


「んふっ、、はは、、」


ツボったようにアオが笑い出す。



「彼は市川燐矢。執事でもなんでもなくて、ただの隊長補佐だよ、、、んはは、はははは」



「アオさん…それ以上笑うなら、これからあなたに車は出しませんよ」


「それはやめて」




「隊長補佐って…じゃあ、隊長は…?

いや聞いたことがない。だって部隊は4つしか…」




「…隠された、裏の部隊」




千草と天原は気がついたように顔をあげる。





「第零部隊隊長、霧山碧。

………これからよろしく」




表情を見て、2人は実感する。

肌が逆立ち、息が詰まる。



目の前にいるのはホンモノなのだと。



ただ強いだけの人間とは違う。圧倒的な異質さと存在感が、空気をねじ曲げていた。




アオは形ばかりの微笑みを浮かべた。

その瞳に一切の光は映っていなかった。





溜めていた分が、、、なくなってきた、、、( ̄▽ ̄;)



ということで、学校のテスト期間に入ります。



1週間ほど連載が消えますが、どうかどうか、戻ってきてもらえると幸いです。



勉強の合間に気まぐれで投稿するかもしれないので、そこはご了承ください。



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