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最強少女の魔法奇譚  作者: 浪崎ユウ
第二章 東京都立魔法高等学園編
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第二章23話 合同授業



「合同授業は2回目ですし、改めて…」



 爽やかな笑みを浮かべる教師が進行し、強面の教師に目配せする。


「俺はB組実技担当、準二級魔法師の駒井(こまい)だ」


「僕はA組実技担当、二級魔法師の車谷志貴(くるまだにしき)といいます」



ーー二級魔法師…なるほど。この男が鬼谷が言ってた、魔高で1番強い教師か…。



「さて、早速模擬戦のルールを説明しますね。

ルールは簡単。 多対多の戦闘を想定して、A組対B組で乱闘の模擬戦をして頂こうと思います。 武器の使用は可能。 しかし、殺傷力が高い攻撃と我々が判断した場合は、直ちに試合を一時停止してその生徒を反則負けで敗退とします。

勿論、戦闘不能となった場合も敗退です」



 戦闘不能、という言葉に、有崎が「ひっ」と恐怖の声を漏らす。



「勝利条件は……うん、制限時間の15分後までに残っている人数が多い方が勝ち。それで、いいですよね?駒井先生?」


「ああ。次学期に行われる魔高オリンピアと大体同じルールだ。良い経験にしろよ」


「何か気になることや質問はありますか?」


 車谷が周りを見回すと、A組の、堅物そうな眼鏡の男子生徒が遠慮気味に手を挙げている。



「はい、ディストリーくん」



「えっ、外国人??」



 車谷が呼んだ名前にアオが驚きを見せると、阿流間が耳元で教えてくれる。


「あの子はカズマ=ディストリーくん。碧ちゃんと同じ帰国子女ってやつで、アメリカに住んでたらしいよ。植田くんと同じ学級委員だよ」


「へー」


「興味なさすぎだろ」


曖昧に相槌を打ったアオに千草が言った。


 ディストリーは真面目な表情で質問する。


「車谷先生、乱闘だと不平等です。B組は2人ほど人数が少ないようですが……?」


「ほんと堅いね〜、なんで相手の心配なんかするの?ぼくたちが有利なのに」


 A組の少年っぽい女子生徒が呆れたように腕を頭の後ろで組む。


「そういうわけにはいかないよ。模擬戦なんだし、平等にやらないと」


「えー」


「B組への気遣いは有難いですが、その心配はありませんよ、ディストリーくん。

実は、ここにいる編入生の霧山くんは校長の推薦なんです。 それに、ここにいる誰よりも魔力が高いようですしね」


 車谷は静かに微笑むが、その瞳は隅々まで観察するような、隙のない視線をアオに向けていた。



ーーさすがの洞察力。というかこの教師の感じは…まるで坂みたいだ…。


ーー自分も実力も抑えて、誰にも見えない、分厚い仮面を被っているかのような…。



 アオも車谷に微笑み返した。


「質問がないようでしたら、1分後に始めますよ」


 1分間の作戦タイム。

その間に、相手の特徴を聞くアオ。


「1クラスは8人。さっきの距離近い2人の寒河江くんと桜ちゃんは精神強化系の魔法のはずだよ!!」


「俺が思うに、絶対気をつけなきゃなのは、さっきディストリーに突っかかってた、星野美音(ほしのみおん)さんだ。厄介な個人魔法を持っててさ。

最近、魔法師資格も取ったらしいぜ?

前回の模擬戦じゃ、その3人にコテンパンにされたんだよな……」


「あの時は遊太、泣きそうな顔してたよね」


「それ言うなよぉ、玲っ〜!!」


「く、比べて私たちの火力は弱いのに……。

もう、やめたい……」


 既に泣きそうな表情をして、手を開いたり閉じたりしている有崎を横目に、アオは口元に手を当てた。


 話が逸れてグダグダになってきたので、彼女は頭の中で現在の情報をまとめて整理する。



ーーまずは様子見だな。



 戦闘特有の緊張と興奮の空気が入り乱れる。空気を切り裂くように、駒井が宣言した。



「では、模擬戦を開始する!!!」






*****






 真っ先に飛び出してきたのは、スカートを膝より上になるまで折った、ボブの女子生徒。


「……君か」


「ぼくは星野美音!!

やっぱり主力は、先に潰さないとね!!」



 不敵な笑みを浮かべ、星野は単独で突入してくる。アオは足を一歩引いて警戒を高めた。



「はは、正面突破なんて。意外と脳筋?」



「《裏切って》」

「碧!!死角に入れ!!!」


 星野の言葉と千草の叫びは同時だった。


 千草の大声に、ほぼ反射で従う。

星野から急速な魔力の流れを感じたからだ。


 そして、碧の背後にいた有崎に魔力が直撃する。


「ちぇっ……君が欲しかったのに……。

ぼくの邪魔、しないでくれる?雑魚が」


 殺気を含んだ威圧で千草とアオを睨む。


 瞬間、有崎の手がアオに伸び、彼女はすんでのところで回避した。



「有崎、さん?」



「ごごご、ごめんなさい霧山さん!!!!!

体が、勝手に、、!!!!」



「視界の中にいる生物全てを影響下におく魔法か……いいもの持ってるじゃん」



 反対にアオは楽しそうに笑う。



「ぼくの《言霊(ことだま)》を甘く見ないことだね」



「大いなる神よ、汝の願いを聞き入れたまえ……個人魔法《奉仕(ほうし)》!!」

「汝の願いを聞き入れたまえ、

風魔法《気砲(アエロバロス)》!」


 その隙を逃さんと寒河江と菅沢が()()し、魔法を発動する。 寒河江が菅沢に向かって魔法をかけると、菅沢の杖先に白い光が集まる。 次の瞬間、空気を裂くような轟音とともに倍以上に強化された風魔法が放たれた。



「《シールド》!」



 咄嗟に、千草がシールドを展開して相殺する。



 今の魔法は、単なる一撃ではなく、寒河江が援護していた。 実際、火力が大きく膨れ上がったのが見てとれた。


 にもかかわらず、千草のシールドはほぼ無傷だった。


「やるじゃん」


 それを見た周囲は驚きの表情を浮かべていた。

興味がなさそうに待機していたA組のメンバーも彼を凝視する。


「寒河江が援護した菅沢さんの魔法を、相殺…?」


「あれ、誰!?」


「つーか何だよあの魔力量は!?」


「どうやら、見誤っていたようですわね…」


 認識を改め、警戒するまでは良かった。


 A組は特課クラスと呼ばれるに相応しい実力を持ち合わせているのは確かだった。



 しかし、相手が悪すぎた。



「任せたよ、界」


「はいはい……、早く終わらせよ」


 その二言を交わした後、蹂躙が始まる。


 B組の生徒も呆気にとられて見つめる。



 なんと千草は()()()()2()()で、個人魔法も使わずに過半数を減らした。



 7人中4人が脱落。



 つまり、B組の生き残りは、あと3人だけとなっている。


「千草があんなに強くなっていたとは…。実技でも座学でも目立った成績は……」



 駒井の呟きに車谷がわざとらしく目を丸くさせた。



「そうなんですか?魔力も相当ですし、これはなんらかの事情で実力を隠していた、ということでは?脳ある鷹は爪を隠すともいいますし」


「じゃあ、なんで今更……」


 ふ、と微笑み、車谷は1人の生徒に目を向けた。




「それは、きっと……」




「千草って、これほど強かったのか……」

って、どうかしたの?碧。

先生になにかあるの?」



 千草の動きを呆然と見ていた植田が、アオに訊いた。彼女の目線は違う方を向いていた。



ーーいま、車谷先生が見ていた気がしたけど…大したことでもないか。



「いや。それより、接戦だねぇ。

ほら、界に対応しようとしてる子がいるよ」


「……星野とディストリー、それにあれは…石塚か。やべぇよ、千草でもさすがにあいつらは倒せねぇ」



 広夜麻が呟く。

 その発言は無視して、アオが首を傾げた。



「そういえば、君たちは戦わないの?」


「なんというか……ねぇ?」

「千草、めっちゃ強ぇし…」

「わ、私たちが出る幕とかない、というか」


「僕は星野の流れ弾食らって脱落したよ」


 阿流間、広夜麻、有崎と続き、植田はしれっと悔しそうにしている。


 ガガッ、と2発大きな音がしたかと思えば、バカ2人、阿流間と広夜麻が沈んでいる。


「え、え、なにやってるんですか……!?」


 引き攣った顔でアオを見る有崎。


「あっ、つい……でも!これでA組と同数だね」


「これは多い方が有利なんだけどな」


 誤魔化すように明るく言ったアオに、植田が呆れ、呟いた。




星野美音。

カズマ=ディストリー。

石塚智也。


対するは、


有崎みずな。

千草界。

霧山碧。




 実際はA組の3人対千草のようなもので、

 今は膠着状態だが、B組が優勢と言える。





 その時。





 体育館の扉に、1人の少年が立った。

 焦茶色の髪と瞳。



 空気が変わり、空間が歪む。



 一瞬にしてこの場を()()()()()()()()()()彼は、気にもしていないように、ぐぐぐ、と眠気を覚ますように伸びをする。

 しかしその魔力は研ぎ澄まされ、その場にいる者の肌を刺した。


ーーなんで…。



「……お前ら、これ以上負けるつもりか?

その試合、オレも混ぜろよ」



 傍若無人。怠惰。毒舌。それでいて天才。


 そんな言葉が似合う彼の名はーー、




「天原、、神月……」




 誰かが、静寂を破るように、そう呟いた。



次回は今日の夜投稿予定です。

天原の登場で戦いの行方は…!?

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