うっとうしいのよ♡大好き⭐︎ うっとうしい♡違うだろう?
「……ねぇ、虎時さん」
結局、朱雀以外全員闇夜のなかでみんな揃った。
「ん、どうしたの。竜ちゃん」
虎時が竜の顔を覗き込むと、竜の顔の表情が時間が止まったようになっている。
「何を考えているの、竜ちゃん」
虎時が心配そうに竜の手を握る。
握られたその手が冷たい。
「虎時さん、冷たいw」
「うん、ちょっとそこいらで、ダイダルウェーブ!!」
ぷっ。
「虎時さん、なにそれ、必殺技ダイダルウェーブ。あなた、どこで何してきてんのよw」
「何して来てんのよぉーー!」
虎時。
一瞬、竜は白狼ちゃんが空の上で風の波に乗って楽しそうにしている姿を想像してしまった。
「竜ちゃん、小松に戻って熱いお茶でもいかがかな」
麒麟がすすめた。
竜以外、みな頷いた。
「あの、ちょっと」
手を取り、引く虎時の腕を掴み直して竜は聞いた。
「あのさ、虎時さん。ーー私達が寝ていた部屋で隣で寝ていたの誰?」
「俺のご先祖さま」
虎時はしれっと言った。
「あぎょうさんあぎょうご?」
「……えぇーーっと」
虎時はいいよどむ。
「虎時さん、だって、私が布団から出た時隣で寝ていた人が居たのに、玄武さんも麒麟さんも外に出てたんだよね」
「クッソーー! せっかく会えたのに、お話出来なかった! しかも、どうして私らと一緒に川の字になって寝てんのよ、わけ、わかんないw どうしてそんな事をしているのか、是非聞いてみたかったぁーーw」
ぶっ。
虎時は、つい吹き出してしまった。
「どうして、そんなこと……」
竜は口惜しそうに虎時の胸に飛び込むから、仕方なく頭を撫でる虎時。
「竜ちゃん、そんなに……執着する必要はないよ。どうせ、俺のご先祖様達ですし」
「いや、きっと、虎時さんたら、さっき言ってたダイダルウェーブで、ご先祖様達を消炭にしてしまったのでしょう!」
可愛い白狼さんが空気の波に気持ち良さげに波乗りしてるのが目に浮かぶじゃないですか。
悔しいし、口惜しい。
「ダ、ダイダルウェーブ!」
「そんな、可愛い声で言ったってダメ! ーー許さないんだからね、虎時さん!」
なかなか、来ない二人を気遣って麒麟が足を止め、振り返った。
「虎時」
「竜ちゃん、誤解ですよ、ダイダルウェーブをかましたのは、あの麒麟閣下でやんすw」
「麒麟さんが……?」
麒麟は再び前を向いてしまった。
「麒麟さんが」
「うん、毎年収集がつかなくなると、麒麟のダイダルウェーブで宴会はお開きになるのであります」
「へぇ……、毎年……って事は、ご先祖様達は」
「ちなみに、こんな会合は定期的にあるよ。でも、俺、今年からめんどくさいし、せっかくのお休みは竜ちゃんと遊びに行きたいから、出る気はないけど」
「会合?」
「そうだね、よく、お正月とかお盆に親戚に会うみたいなものですl
「……」
「竜ちゃん、怪しさ満点の会合に出たいの? オッサン臭いよ? それでも、良いの?」
「……麒麟さんに勧められたから、虎時さんもお茶飲みに行こう。寒いし……」
「そうです寝」
「虎時さん、寝たいの?」
「眠いに決まってます」
竜は声をひそめて言う。
「私人の四神の会合って、実は『交霊会』なの?」
虎時は頭をカキカキ、背中を丸めて、
「高齢会だなw」
「虎時さんてばw」
ゲラゲラ、結局、これだ。虎時と深い話をしようとすると面白い話にもっていかれる。
それにしても、麒麟さんのダイダルウェーブと、白狼ちゃんのダイダルウェーブは見て見たかった。
でも、本当にそんな事をしていたのかな?
小松に戻って部屋の隅々まで確かめた竜だったが、その気配のひとかけらも無くなっていた。
しょうがないから、虎時が出したお茶とお菓子をみんなと一緒に虎時の隣に座って、頂いた。
それはとても美味しかった。
「そう言えば、朱雀さんは……」
「ええと、竜ちゃんも知っていると思っていたけど、朱雀は着物の即売会のイベントがあるからって俺たちが寝る前に帰ったよ」
「ああ、そうだった」
あれほど、優美で可憐な男、朱雀。
それなのに、全く竜は忘れていた。
「虎時さん、私達の隣で寝ていたのは朱雀さんだったんじゃないの?」
「そんなはずは……ないよ」
「含みを持たせるところが、なんか怪しいのよね?」
「竜ちゃん」
竜が思い出せるのは、みんな襖の前で座って瞑想していた時に玄武の隣に朱雀がいたくらいまでだ。
「朱雀さん、何かあったりしない?」
虎時はいつものように、爽やかな笑顔で言った。
「朱雀は強い男だよ。何かあっても大丈夫」
「虎時さんの、大丈夫は、含みがあって怖いのよ」