女神♡男神
「……僕は、秘密です」
玄武は、スッと目の前へ視線を戻した。
「なんだよ、またダンマリか」
虎時はため息をついた。
「虎時さんだって、本当は分かっているんじゃないの?」
虎時は腕組みをしてうなずくが、
「玄武は、竜ちゃんに当てて欲しいんです」
「そう言う虎時は、どうして僕の口から吐かせたいんでしょうか」
「……別に。竜の感覚がどれほどのものなのか、ただ知りたいだけ……」
玄武は、鼻で笑った。
「虎時、竜ちゃんを試すのはあまりよろしくないし、僕の事もそっとしておいてほしいな」
「そっとしておいて欲しいねぇw」
含みを持たせた言い方の逃げは虎時は少し許せないような、なおさらどうでも良い。
それは竜への、玄武の甘えなのだ。
「そう言えばさぁ……」
竜が呟き、前を見ると電柱の光の下に、タバコを口に咥えこちらを見つめている麒麟がいた。
「竜ちゃん、気がついたかね。ーー平氏の守神は宮島の女神だ。畠山重忠の娘、松姫の信仰対象が海神宗像三女神の市杵島姫」
竜がハッとして、目をシバシバさせると、虎時がニヤリと笑って言った。
「麒麟。源氏の守り神も、女神だぞーー鶴岡八幡の神功皇后」
麒麟は鼻で笑った。
「まだまだあるぞ! ーーしかしながら、虎時、八幡神は神功皇后だけではなかろう。ーーそして竜ちゃんに強く影響しているのは、神功皇后が信仰した海神ツツノオノミコト、そして豊玉姫」
麒麟がフウっと、煙を吐いた。
「沖ノ島……対馬……か」
虎時と麒麟の間に見えない何かが動いているようだ。
「あの、ちょっと、麒麟さん。確かに私も平家の守神が女神だって気がついたけど、いつの間にやらその話がどうして私に?」
麒麟は、まあなと言わんばかりにジェスチャーした。
「人生の航海のお供に」
「えーー、でも」
竜がチラチラ、麒麟と虎時を交互に見つめるが二人は黙る。
「竜ちゃんがそう思うのも無理はないよ。竜ちゃんの潜在意識は女神が大好きでいてうっとうしいのだから」
「玄武さん、なんか、その言い方だと……」
麒麟押し黙る。