最良の選択とは?
「貴方の御眷属さんが咥えている鍵は神の神力を解放する鍵だと言うが」
麒麟が護岸の遊歩道にいる黒装束の男の目の前へ行った。
鍵を口に咥えていた眷属は、主人と同じ光り輝く金色の瞳を潤ませると、咥えていた赤いふさのついた鍵を麒麟にしれっと手渡し、それをそっと見ていた黒い装束の男は半ば諦めた顔をして、手を上げ振ると眷属と共に霧になってかき消えた。
「大丈夫ですか? 血が出ていますよ」
穏やかで優しい女性の顔がグンと麒麟の顔に迫ったので焦った麒麟。
そんな麒麟を気遣う声に麒麟はハッとして我に帰った。
ちょうど麒麟が水と戯れていた最中に遊歩道を散歩していて通りかかったのだろう。
麒麟は手に痛みが走り、左手親指の付け根からはまだドクドクと鮮血を見た。
「ああ、わしは大丈夫です」
女性が絹のハンカチをショルダーバックから取り出して麒麟の手にすかさず巻きつけた。
「応急処置ですから、早めに然るべき所へ行って下さいね」
女性はかなり強くハンカチで手首を止血してくれた。
「ありがとうございます」
麒麟がそう言うと女性は軽く会釈をして立ち去ろうとした。が、麒麟は女性の手首を掴み引き留めた。もう既に、止血は必要無いくらい麒麟の傷が瞬時に閉じた。
「貴女はククリヒメ……」
麒麟が静かに言うと。
「私は元々、人と人と調和をくくる者達。あなたが昔の私のようなことをしていたので、様子を見に来ただけですよ」
「昔の私の様にですか。では、ククリヒメよ。ーー聞くが先ほどの男は」
ククリヒメは笑った。
「ええ、あの人ですか。『人間が大好き』なおせっかい男ですよ。私的にはちったぁ、静かに静まっていろって思うのですが」
「ククリヒメ。お言葉でありますが、あの男が心を配り動くと言うことは『今』この國にとってよもやのっぴきならぬ状況なのではありませんか?」
麒麟はククリヒメの手首から手を離さない。
「いやぁねぇ〜〜。私はあの男とはあまり……」
ククリヒメは言葉を濁した。
「ククリヒメよ。では、何故今貴女はここへ来なさった?」
ククリヒメは神のお告げを告げる者。そんな者が目の前に現れたのだ。何かありそうだが。
「そうね、貴方に祓われた位には重要な仕事があったかもしれないわね」
「わしが祓ったのは、この地に巣食う歪められた幻想だ!」
ククリヒメは微笑んだ。
「あなたのその熱意、私にもわかるわ。ただ忙しいだけではあらねども」




