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印象に⭐︎残る? あたりまえ?

竜は苦笑いした。

「昔友達がーーなんについて言ったのか覚えていないけど。あたりまえだと言っていた事があったんだけど……」

「竜ちゃんに、ですか?」

竜はふしめがちに、

「私さ、『あたりまえ』に生きることが出来なかったから、どうにか頭の中でいつも飲み込めない事に『けりをつけよう』と思っていたんだけど。最近は虎時さんに出会えて、そんな事も忘れていたな……山形とか仙台に行く事は楽しいけど、帰りたくない、もう、時間が……時間って一瞬なんだよな……」


虎時は、バットを持って素振りをするように腕を振った。

「竜ちゃんの言う、その『あたりまえ』の定義を俺に教えてよ」

「あたりまえの定義?」

虎時に聞かれて顔をあげた竜。

「みんなは、人生一度きりって思って頑張るって言うけど。ーーただ単に旅の途中だって思うの」

「竜ちゃん、それは牧歌的な?」

「ーーあっ、そうそう、それと虎時さんて『パラレルワールド』ってあると思う?」

虎時はいかにもさぁてね〜〜と言わんばかりに肩をすくませた。

「私さ、パラレルワールドの意味をどこかで履き違えていたみたい」

「それは、それは。ーー竜ちゃんそれで、どうして履き違えていたと思うのですか?」

竜は笑った。

「私的に色んな時代の色んな世界、たどって来た道のりをふと思い出す事と間違えていたみたい」

「確かにそれでは、『パラレルワールド』とは違いますね……ただ、過去の複数の体験を今疑似体験する事でしたら、もしかしたら、その過去の複数の『体験世界』がパラレルなワールドであるかもしれませんし、これから『未来』に体験する複数の『体験世界』が竜ちゃんにとってのこれからのパラレルな世界なのかもしれませんし」

竜の瞳が曇った。

「虎時さんの、『竜ちゃんの』って言い方が気に食わないね!」

虎時はまた素振りをする。

「竜ちゃん。またまたぁ〜〜。そんな些細な事で怒らないで下さいよ。ーー俺だってもちろん、竜ちゃんと体験する事もこれからもあるでしょう?」

竜は、頭を横に振った。

「あのさ、虎時さん、パラレルワールドって、同じ時間に複数の世界線がある事でしょう。だから過去と未来で体験した事はパラレルワールドって言うの?」

「竜ちゃんが今と思う、今ここで後ろにスキップすることも、今より先へスキップする事も、もっと言えば、この世ではない世界へスキップする事で体験した『その場』と言う世界であれば、あたりまえだけど、それをパラレルなワールドと言っても過言ではないのかな」

「……ああ、じゃあ、塀の上にいた普通の猫より少し大きくて緑色の猫は、私がいるこの世で見た、別の世界の猫でほんの一瞬だけどパラレルなワールドに入り込んでいたという事なのかなぁ、虎時さん」

「人はそれを不思議の国のアリス症候群だと言うだろうけど……」

「だよねーー。虎時さん、でもね、2回ほど見たんだよ。その緑猫、家と家との境の塀の上でさ」

「竜ちゃんーーそうですね。境は境界なので、時折垣間見えたりするのかな……人生の節目やなにやかにやの時も人はフッとその境界に目がいってしまうものです」

「虎時さん、もし、その境界がとても楽しそうであれば、そこから戻って来れないとかない?」

「だから、昔の人は『遊び』があったのですーー」

「遊び? ーー昔の人の生活、人生はゆるかったって事? ーーそれとも?」

「竜ちゃん、そうではありませんよ。遊び、緩みがあったからこそ、穏やかに日々をくらせたのですーーほら、武士がよく言うでしょう。『気の緩みは死に繋がる』と。穏やかに暮らせない時代においては、他界と繋がる事は気もそぞろになってしまうのでパラレルを選ぶよりも『一筋縄』で生きたかったのが強かったと思いますよ」

「じゃあ、虎時さん、人間の本来の人生って、目で見えるひとつ道の人生だけではなくてパラレルに、縦横無尽に生きれてたってわけ?」

虎時は腕を止めて頷いた。

「先人は奥ゆかしく生きている様で、そうでは無かった。ーー農作業で、地味で古臭いやり方を毎年変わらずやっている様に見えて、魂は遠い過去や未来の最高の技術にふとした瞬間にアクセスしていたーー俺も自分で言っていて嘘だろうとか思うこともたまにありますがーーああ、そうだ。竜ちゃん。現代の俺たちだって『繋がっている』と思った時は意外とその状態になっていたりしますよ」

竜は虎時のシャツの袖を引っ張り聞いた。






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