ええ♡ちょっとだけよww♡どういう事ですぅ?
執事服を見に纏い、オールバックな髪型の玄武は中年男性の良いところを全て併せ持った姿である。
背筋もスッと伸びていて背が高く、ガタイも良い。
私人の四神は一人一人何かしらの道を生きている。
玄武は、弓道……と。もうひとつ。
「千佳子さん、僕の蛇ちゃんを探してもらえないでしょうか」
玄武の低い声がリビングに響く。
「ええ、なにーー玄武さんの蛇って『男』なんですよね……」
千佳子のレイダーに「男」だと反応があった。
千佳子は口元を少しへの字に曲げていかにも嫌そうに言った。狼くんに嫉妬されたりしたら不愉快であるから。
そもそも目の前にいるのも男おとこしい玄武である。
ーー狼くんは別として、なんで私はムキムキマッチョな人とご縁があるのかしら。
ふぅっと、ため息をついて、千佳子はショルダーバックから色とりどりで様々なカッティングが施された宝石をテーブルの上に取り出し置いた。
「玄武さん、この中からひとつ選んで手に持ってくださいーーあぁ、いえ。ふたつね。玄武さん、貴方ならふたつ選んで」
少し、宝石をシャッフルして、いかにも神妙な面持ちで千佳子は言った。
玄武は、うーーんとあごを掻きつつ、クリアブルーの雫のカッティングが施された宝石をひとつ手に取った。
「千佳子さん、これ……かな?」
「神名というのは、神の……その玉は雫玉」
千佳子はまぶたを閉じて、左手に持った桃色の火を灯した蝋燭に意識を集中しようとした。
「千佳子さん、かなと言うのは神名の事かな?」
ふと、玄武はつぶやいた。
「チッ、玄武さんさぁーー貴方の『蛇さん』は『み』……カタカムナで言うところの、『実体』を伴わないモノでしょう、だから……w」
玄武はため息をついて顔を手で覆った。
「あの、玄武は……」
ーーもうすでに始まっているのだ。
「……すみません」
「ええ、いいの。玄武さん、そのまま手のひらを広げ、その真ん中に宝石を持って」
「……」
玄武は言われるがまま、そうしてみる。
千佳子はティーカップのソーサーに蝋燭の蝋を垂らす。
「えっ、そこに蝋を垂らすのですか?」
玄武。
「うるさいわね、何、玄武さんの頭にでも垂らせば宜しかったかしら?」
めんどくさいから、魔方陣を描かずに済まそうかと思ったのに、ブツブツうるさい玄武。
「そうですねーー。僕を贄に『蛇ちゃん』を呼び出す事も可能かと」
「はぁーーーーw こうだからもう、筋肉野郎は頭まで硬くて嫌だわぁw」
そういうのが嫌だから、麒麟には迷惑であろうが、如何にもお高いアンティークソーサーを贄に穏便に済まそうかと思っていたのに。
桃色の蝋燭が、行きどころなくソーサーに滴り落ちて行く。
「ーーそもそも、四神の玄武、貴方が居なくなっては召喚された『玄武』は、拠り所が無くなってしまうでしょうがw」
千佳子は蝋燭の炎をフッと吹き消し、テーブルに横たえた。
「僕が……、僕が居なくなったら他の玄武候補が産まれるだけです」
なによ、四神がついてる男のくせにそうもあっけらかんとしているのよ。
清々しいほど玄武は執着は無いようだ。
「それって、チベットの僧侶みたいに直ぐに生まれ変わるとか?」
玄武は視線を横たえた蝋燭に落とし、雫玉を持った手を軽く握った。
「千佳子さん、つまらないかもしれませんがそうではありません。僕たち私人の四神は『麒麟』を筆頭にその時代に示し合わせて生まれてくるので。次回はいつになる事やら。……もしかしたら、そう言った予言の事のようであれば四神仲間でも僕より他の方に聞いた方が無難かもしれません」
「……聴く。私が……。そんなのめんどくさいから」
千佳子は、キッと玄武を睨みつけると、テーブルに乗り上がって玄武の背後斜め上の空間から、黄色い蛇を引きずり出した。
「玄武さん、貴方の探している蛇さんはこの子?」
「それとも……」
千佳子はスッと空間を切ったら、土砂流れのように白い蛇さん達が異空間から流れ出て来た。
二人の目の前のテーブルは蛇さんで山盛りである。
最後にちょこんと、白いあの廊下で見た白い狼さんが飛び跳ね登場して、蛇山の上でちょこんと座ると後足で頭を掻いた。
「何よコレ。あんた、どんだけ蛇さん連れてんのよw」
玄武は、ひと通り蛇さんの顔を見たがどれも「玄武の蛇さん」では無かった。
「僕の『蛇ちゃん』じゃない」
涙こそ流さないが、痺れるほど後悔した。
邪の道は蛇。
竜の道は、竜に聞いてみた方が良いのだろうか。
でも、竜はこういった類のモノが龍と狼以外に見えているように思えない。
「すみません、千佳子さん。僕がテーブルから降りるお手伝いをば」
玄武はそっと立ち上がり、あられもなく胸元から何から何まで開いてしまった千佳子にぺこりとお辞儀をして胸に手を当て軽く頭を下げたーーまるで執事の様に。
「……!!」
ひゃー!!
即座に千佳子はワナワナソファーに転げ落ちると、床に落ちた。
玄武の接待は終わってはいなかったのだ。
「……あの、聞いても良いかな?」
「姫、いや……千佳子さん。何なりと、僕の脊髄反射で答えられる限りの事で良ければお答え致します」
「姫……ですって。ーーようやく、鈍臭い私でも分かったわ」
「僕の何を分かったのです?」
玄武はカラッとした微笑みを浮かべている。
ーーこういう所も好きになれない。
千佳子は、胸元の襟を正すと、ソファーに座り直し、玄武にガンを飛ばし言った。
「玄武、貴方に蛇さんがわんさかいるのは、貴方を思う人の想念が多いか、そう言う想念の次元にどっぷり染まっているって事だと思うのよ。ーーそんでもって『探している蛇さん』が玄武さんのそばに居ないって事は……」
「居ないって事は……」
玄武はまた真顔に戻っている。
「本当に好きな人の所に行ってるって事ない?」
「僕の本当に好きな人?」
「そうよ。玄武の蛇さんはオスなんでしょう。好きな人の所に行くの当たり前じゃん?」
「僕の玄武の亀さんを嫌いになってしまったのでしょうか?」
「さぁねーー、どうかなぁ。玄武って雌雄一対。陰陽で事足りてるから、四神の中でも愛については恐るるに足らず、陰陽相まって最強の北斗星君……いや待って私が言いたかったのは玄武上帝の事で……」
間違いに気がつきオロオロする千佳子。
まあまあ、落ち着いてと玄武は手で合図する。
「北斗星君ですか……。僕は閻魔様では無いですよ。僕も私人の四神に仲間入りした時に少し、おかしいとは思っていたのです。私人の四神って言うのに、なぜか四霊の麒麟が入って5人。ーーそれなら、麒麟は黄竜ですし『黄竜』なんです」
死に触れた玄武のエネルギーフィールドに触れてしまった千佳子。
「黄竜?」
「そうです、中央を守る竜。それが『黄竜』なんですよ……多分。僕も私人の四神グループを創設した麒麟の思惑については詳しくは分かりかねます」




