精一杯♡生きる
あわわっと、虎時は重心を崩して後ろに倒れ込んだ。
馬乗りになった竜はニカニカ笑ってる。
そのままーー虎時は抱きしめた。
一瞬だけ。
「虎時さん、ケチッ!」
「竜ちゃん、俺は決してケチな男では無いのであります。ケツも出した所でーーよし、よし。竜ちゃん、湯に入ろう!」
虎時は自分のケツを叩いて言った。
「虎時さんケツーーーうん!」
仕方ない。どこか、物足りない竜だが仕方ない。
二人は大浴場の
身体を洗って、桶を石張りの床にポクッと置く音が響く。
「ああーー、虎時さん。私、この音♡すごく好き!」
竜は、内風呂から見える坪庭を見つめ、そっと湯船に足をつけた。
「!!」
思った以上にぬるいが深い。
ズブズブと竜の身体が沈んで行く。
虎時は知らない。必死に背中を洗っている。
いや、何も知らないはずはない。だって、八切と下見をしていたのだから。
竜はトプンと頭まで浸かってしまった。
足が底につかない。
一瞬だった。
ゲハっ!
竜は、湯を少し飲んでしまいむせびつつ、湯船のふちに頭を出した。
「竜ちゃん、大丈夫ですか?」
虎時は竜を心配そうに見つめその場に座ると引き上げようとしたが竜はそれを拒んだ。
「大丈夫。ただちょっとお湯を飲んじゃって」
ふわっと身体を伸ばし、竜は仰向けに浮かび上がった。
しばらくぷかぷか浮いていた竜だったが、恥ずかしかったのでもう一度潜った。
虎時はそれこそゆっくり、湯船に浸かった。虎時は肩まで浸かった。
ブハッ!
竜は再び顔を水面から出すと虎時の隣に座った。虎時の座っている所は階段状になっていて座れた。
竜は足をばたつかせ、虎時はじっと湯の温かさに目を瞑って浸っている。
竜はそんな虎時の隣に座っていると、脳裏に浮かんだ。
ーー深い密林の中、湯気と共に白く浮かび上がる。立ち姿で長い黒髪を左肩に流し、膝までお湯に浸かるスタイルの良い美女の後ろ姿。
竜は、自分の胸元を見てしまった。
そこまで大きくない胸、引き締まっていない腰。
ふと虎時を見たら、竜の視線に気がついたのか不意に瞼を開け、竜と視線を合わせニコッと笑った。
「ムムム……」
なんか、嫌。虎時が何を言ったわけでも無いけれど。
虎時のまとう気配はいつも気高い。
田舎者の芋娘の代表みたいな竜。時々、こんな私が虎時の隣に居て良いのか悩む。
竜はスススッと坪庭を見るために窓際に寄った。
明るい室内から暗い庭、そして夜空を見上げる。
ーー何故だか、胸がキュッと苦しくなる。
……森に温泉。
「竜ちゃん……」




