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♡別の宇宙♡

 細長く暗い廊下は赤い絨毯が敷かれていた。


 竜は足元が軋んでいるような音もしたはずなのだが、奥から聞こえた八切の声がまた来るのではないのかとそちらに気を集中した。


 途中、襖が開け放たれ布団が敷かれている客室が二つの部屋越しに二つあった。


 虎時はチラッと扉の開いていない部屋を見たが、鼻歌まじりにどうとも思っていないみたい。


ーー二つの部屋にすでに布団が二対ずつ敷いてある。ねぇ、虎時さん、不思議じゃないの?


ん?


虎時さんの瞳が虎のように琥珀色に一瞬光った気がした。


そもそも、虎時さんは古風な家庭で育ちーーこういった風情ある旅館や場所がとても似合ってる。


ーーだからこそ、越後平野の野っ原で原始人のごとく育った竜にとっては虎時は結婚後に様々なすり合わせの過程で高嶺の花に思えたのだ。


だので、一瞬結婚を迷った竜だったが、即決して良かったと思う。


竜だけだったら見れない世界を見せてくれるのだ。


「お二人さん、こちらへ」


やっと八切の声が聞こえてきた。はっきりと明るい白い光が廊下に漏れた。八切の顔がヒョイッと飛び出した。


「八切さん」


顔が見えてホッとした竜。


 突き当たりに客室より少しだけ広い庭に突き出した休憩所があった。


年季の入った茶色いソファーには背になる場所に子綺麗な白いレースがかけられて、三面がガラス張りの室内からぼんやり外が見えた。


 八切が昔懐かしい、円柱型のコロナの石油ストーブにライターで火をつけ始めた。


カチッカチッとライターの音が響く。


ボワッと火がつくと見ただけで暖かさを感じる。


竜はストーブを見ていた。


虎時は開け放たれた廊下の暗がりの先を見ていた。


「あの、矢切さん。この先に大浴場があるんですか?」


「ええ、虎時さん。その通りです。この家には私たちしか居ないので電気は使うところだけ灯けているので見えませんが。その奥です。ーーやはりこうも家中暗いと怖いですよね?」


「そうなんですか、俺、温泉がとても楽しみです」


虎時はニンマリ笑った。


「そうですか……今はお湯を抜いてありますので今入れて来ますね。あっ、それと掃除が大変なのでひとつの湯船しか湯を張らないので男女で湯に入る時間を分けましょう。ーーそれとも」


八切が何か言おうとしたが、厨房から光がこちらへ向かい歩いて来る音がしたのでそこで話を終わしてしまった。


「まずは、お茶でもどうぞ〜〜」


光が笑顔で入って来た。


虎時は手をストーブにヒラヒラ炙っていた。


「ありがとうございます」


竜はソファーに座ると、前に差し出されたお茶をひと口含んだ。


「ふぁあぁ。この玄米茶美味しい〜〜」


冷えた身体に染みる暖かさ!


竜を見つめる光の眼差しも暖かい。


「竜ちゃん」












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