白くて♡長い
竜の視線に合わせて、顔だけ他人に変え玄武姿をトレースした白蛇はニヤリと笑い、車ごと消えた。
『君もにゃかにゃかの策士ですな』
玄武の蛇は、苦笑いして鎌首をもたげ、すぐさま藪に姿を隠した白蛇の後ろ姿を見送った。
『次は、僕ですね』と、玄武の蛇は弁財天のような天女に姿を変えた。
『竜がもう一度振り返る2秒前、1秒……』
竜はやはりもう一度振り向いた。
弁財天蛇は竜と視線があった瞬間、眉をひそめ、竜の横を通り過ぎる瞬間、そっと羽衣で口元を隠すとスタスタ、イートインスペースへ向かって行ってしまった。
「そ、そうだよね。あ、あたしなんて、何もやってなくとも女の人に嫌われるもんね」
玄武のそっくりさんを見て気分が掻き乱され、ーー弁財天だか、天女のコスプレイヤーさんに嫌われても仕方ないと思う底なしの絶望感と、いつもの事だと、なぜか安心感。
「ちょっとおんなじ方面に行くの嫌だけど、でも、私も小腹が空いたし、虎時さんにも何かご飯買ってから帰らないと」
イートインコーナーに先を行った弁天様がいるとしたら、怖いな。超ビビりながら竜はイートインの中に入った。
案外、弁天様はトイレに行ってしまったのか居ない。
胸を撫で下ろしつつ、竜は自販機の前へ行きコーラでも買おうとお財布から小銭を出した瞬間、隣にいた、スラッと背の高い、同世代っぽい男性に声をかけられた。
「……もしかして、呉竜さんですか?」
「えっ?」
男性は苦笑いして、しっかりこちらに体を向けると軽く会釈した。
「僕は、小笠原慎吾と言います。ーー竜さんがいるという事は、虎時さんもこちらにいらっしゃるのですか?」
「ああ、もしかして、小笠原さんは虎時さんのお知り合いですか。虎時さんは今車の方に……」
そこまで竜が話したとき、ふわっとした明るいウェーブの髪型が美しい同じくらいの年頃の女性が二人の元へ駆け寄って来た。
「このひとが竜ちゃんなの、どうも、私、小笠原加奈。よろしくね!」
ギャルだ。
「加奈さん、こちらこそど、どうぞよろしくお願いします」
竜は緊張して手汗がびっしょり。
あわわっ。
ーー大変な事は重なる。
「なに、どうしたの、パパ、ママ!」
加奈の後ろから、8歳くらいの女の子、6歳くらいの男の子、よちよち4歳くらいの男の子がわらわら竜の周りを取り囲む。
「あわわわ!」
とっても可愛いお子様達だが、竜は白雪⚪︎のマレフィセ○みたいに、「あーら、おちびさん達どこから来たのかしら」などど、うまい言葉が見当たらない。
ど、どうも、女性と小さい子ども達と話そうとすると緊張する。
どうしても、トラウマが蘇ってしまう。
そんな事お構い無しに、小笠原は竜に話かけてくる。
「虎時さん、アレ本当に良いですね!」
竜は何を話されているのか全く頭に入って来なかったが、小笠原は急に竜の背後に話しかけた。
「それほどでもーー⭐︎」
虎時がアイマスクを首に引っ掛けたまま、眠たそうにあくびしながらイートインコーナーに来ていたのだ。
「ーー実は俺はちょっとだけ手伝いをしただけで、ほとんど麒麟があのアプリを作ったのであります」
小笠原はそれでも好奇心旺盛な瞳を輝かせ、
「それでも、ほんと、便利だと思いますよ!」
「虎時さん、何、アプリって?」
「……竜ちゃんが言っていた、もしあったら良いなのーー俺たちの私人の四神と同じく不思議で怪奇なグループのひとつ。ほら、こちらがグループ小笠原のメンバー、小笠原君と奥様の加奈さんと……お子様達であります!」
虎時に軽く紹介された小笠原ファミリー。
一番上の子が元気よく、
「あたしは小笠原司! 司ちゃんて呼んで!」
威勢の良い、どちらかと言えば慎吾パパになんとなく似ている、司ちゃん。
「僕、小笠原拓人!」
加奈ママ似の元気いっぱい小学生の男の子。
「ぼく、明紀!」
ちょっと、おっとりしているが賢そうな顔の慎吾パパ似の幼稚園児。
『3人合わせて、サトリ姉弟!』
3人揃って、戦隊ヒーローポーズを決めた!
「あやや、元気いっぱいだね!」
やっと声が出た竜。
「うちの子の名前の1番後ろの一文字ずつで『さとり』になるんですよーー!」
加奈が満面の笑顔で3人を抱きしめ、頬擦りをする。
「良い名前ですね」
虎時が顎を撫でながら竜を見た。
やっと、竜はこのわちゃわちゃな雰囲気に慣れて来たようだ。
虎時は自分の未来の子供達の姿をちょこっと想像した。
ーー竜ちゃんとの子どもも可愛いんだろうな。
「虎時さんは、もちろん『長月の君』の仙台コンサートに行かれるんですよね?」
「……素性法師の生まれ変わり、玄利さんのコンサートですか?」
虎時は興味津々に小笠原に聞いた。
「そうです、虎時さん!」
小笠原はほら、見てよと言わんばかりにコンサートチケットを見せてくる。
「え、ちょっと待ってよ、あの玄利さんのコンサート!! まじで? まじで?」
小笠原の顔とチケット、虎時の顔を見つめる竜。
「あ、そう言えば。俺たちの分と言って、麒麟が渡してくれていました」
「え、そうだったの虎時さん! ーーそういう事は早く言ってよ! 超、嬉しい!」
「竜さん、とても喜んでいますね」
小笠原は苦笑いしつつ、コーラを5本買って、家族を連れて車へ戻ってしまった。
「あ、そうだ。私もコーラを買おうと思っていて」
ふと、竜は小笠原一家を見送っていた虎時の顔を見た。
「虎時さん?」




