乗り越える♡力と千佳子
「……千佳子さん。もう、良いです」
千佳子は短いクローバーの葉を摘み、王冠を作るのに夢中だ。
「……いつだったかな。竜ちゃんが加奈ちゃんの為に作っていた」
千佳子は作る手を止め、立ったままフリーズする玄武を見上げて言った。
「ああ、千葉くんから聞いていたわ。竜ちゃんと大学の学友さんの事ね」
「……」
玄武は、苦虫を噛んだような顔をした。表現しがたい。
「……」
千佳子は、まだ出来上がってはいないクローバーの王冠を、玄武に差し出した。
「竜ちゃんもあなたも、この王冠の様にーーいつも足らなかった」
いらないのならーー
千佳子は、そのまま手から王冠を落とそうとした。
「冗談はやめて下さい。千佳子さんコレは、クローバーの王冠ですね?」
「そうよ。良くわかったわね。ーーあの時のあなたも、良く感が効くっていうのかしら。影に日向に守っていたのよね」
「……」
この広い公園の芝生に、二人っきり。
冬の曇天の下、北風が頬を突き刺す。
雪が降るかもしれない。
「すべてのものに、裏切られたと思う?」
千佳子が聞いた。
「……僕は、分からない」
玄武には私人の四神仲間がいる。ーーそれが全てでいい。
「じゃあ、それで良いじゃない」
「は、僕の蛇ちゃんを探すことは?」
千佳子はふうっと、ため息をついて、膝のほこりを払った。
「玄武ーーいえ……」
千佳子は、言おうとしていた事を飲み込んだ。
「千佳子さん、僕は蛇ちゃんを探す依頼をしましたが」
「ーー分かっているくせに。ーーまあ、仙台まで来たわけだし。観光しましょう。『玄武さん』」
千佳子は、右側を向いて仙台の歴史資料館へ行こうと誘ったが、玄武は首を横に振った。
一刻も早く、蛇ちゃんを見つけないと。




