10.お仲間に違いありません
空耳かな。
うん、絶対そうだよね。
こんな天使が、実父に向かってそんな言葉を吐くわけが――。
「ネトゲもラノベもないのは退屈だけど、あのイケオジだけはマジヤバイ」
ぬぁぁぁ!?
思考に割入る発言に、私は内心絶叫した。
ちょ、待って!? なんで?! 嘘だよね!?!?
大混乱の私に対して、お母様は穏やかな目で彼女を見ている。
まさかいつもこうだったの!?
私が寝てるあいだ!?
嘘でしょうと目眩を覚える私を他所に、お嬢様はまるで友達にするように、気安くお母様に巻き付いた。
「ねぇシリカも思うでしょ?」
「なにを?」
「お父様の話よ。無口で怖そうに見えてホントは優しいとか。もう落としに来てるじゃん」
罪深いわー、と愛くるしい声で、姿で、彼女はその第一印象をぶち壊す。それに変わらず微笑んでいるのは我が母だ。
「そうねぇ、落ちるかどうかはさておいて、素敵なご主人様ではあるわねぇ。こんな可愛いお嬢様と出会わせてくれたことも含めてね」
「やだもう、シリカ好きぃ」
酔っぱらいのテンションか。
というか、あれ?
今のって。
「ん?! まって、まって!? おかあさま、おじょうさまとはなせるの……!?」
包容力がカンストしてるだけじゃなかったのか、お母様。異種族間で成り立つ会話に戦慄し、私は思わずぎゃんと鳴いた。
「うーん、そこは私が、というよりは、ディアナ様がと言うべきかしら」
「おじょうさまはいぬとはなせる……」
「というよりどんな言葉も分かるみたい」
もしや転生チートというやつか。
とはいえ、私も前世の記憶があるからなぁ。他犬からすると有り得ない存在になるだろう。
何でもかんでも受け入れる、この母の方が珍しいのだ。
「あれ? シリカの子、もうちゃんと話せる子がいるの?」
「そうなのよ。だからここの事にも、ディアナ様にも興味津々。ね? エリィ」
何か言ってご覧、と母が微笑む。すると脇から視線がぷすりと刺さり、顔を向ければそこには天使の期待に満ちた眼差しが。
「……、えーと、あの……」
「うん?」
「その……」
九割九分九厘転生者。その上言語能力者で父親をイケオジ扱いする見た目天使な詐欺幼女。
何をどこからツッコむべきなのか。幼いわんこな私の脳には処理する情報が過多すぎた。
というわけで。
「こ……、こめってこのせかいにありますか?」
とりあえず、聞きたいことを聞いてみた。
ご訪問感謝です〜っ
お久しぶりの癖に短くてごめんなさい!