大正時代からの挑戦
土蔵のところまで三人が戻った。扉が開いているのだった。
「あれ、お父さんかな?」
「ねえねえ、光男さん、ちょっと中、覗かせて貰えないかしら?」
土蔵内の探索を催促するオチャコである。
「そうだねえ、聞いてみようか」
この土蔵を所有するお家の息子であっても、勝手に友だちを連れて入るのはどうかと思った明智くんは、まず一人で入って、たぶん中にいるだろう、お父さんから許可を得ることにする。
しかしながら、その明智九兵衛さんが、突如、土蔵の出入り口に姿を見せた。
「お、光男か。どうした?」
「うん、友だちと一緒なのだけど、この土蔵の中を見物してもいいか、許諾を得たいと思って」
「あはは、許諾なんて堅苦しいことを言うな。ここはいずれ、お前が受け継ぐ明智家の蔵なのだからな。ああ、それよりも友だちというのは、そちらに並ぶ、可憐で愛らしい花のような女の子たちかい?」
「うん、そうだよ」
オチャコとトシヨンは、少なからず照れてしまう。
「それはそうと、お父さん、この中で掃除でもしていたの?」
「いいや違う。江戸時代のものらしい絵が保管してあって、それを、美術館に勤めている人が鑑定したいと頼むから、しばらく預けていたのだよ。だが、それは贋作だったらしく、突き返された。その絵を、ここへ仕舞いにきただけだ」
「どんな絵なの?」
「東洲斎写楽の浮世絵を模倣した作品だ」
「へえ~、江戸時代の絵画があるなんて、知らなかったよ」
「ああそうだな。それより、大正時代のご先祖が残した、懐かしい手紙が見つかってなあ。ミステリアスな内容だよ、見るかい?」
オチャコは聞き漏らさなかった。それで思わず口にする。
「見たいです!」
「お、やけに食いつきがいいねえ」
「はい、あたし推理とか、ミステリーとか大好きだもの!」
「あははは、面白いお嬢さんだ。光男と末永く、つき合ってやってくれ」
「はい、こちらこそ!」
意気投合するオチャコと九兵衛さんである。
「ねえお父さん、それで手紙って?」
「ああ、これだよ。俺がお前くらいの歳だった頃、初めて見つけたのだが、今も謎に包まれたままだ。ミステリー好きのお嬢さんたちと一緒に、この挑戦を受けてみてはどうだろう?」
そう言いながら九兵衛さんが、古くなって色も変化しているような封筒を、明智くんに手渡す。
「あ、そうそう、ここの鍵は錠前に挿したままだから、調査が終わったら、しっかり戸締りを頼むよ」
この言葉を最後に、九兵衛さんは立ち去る。
明智くんが、封筒の中から手紙を取り出したので、オチャコとトシヨンも、それを一緒に読んでみる。
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儂、明智大五郎からの挑戦だ。
これを読むのは、儂の孫か、その孫か。
儂が残す謎解きをしてみるがよい。
一緒に入れた紙片を頼りに、お宝を探せ。
なかなかに価値の高い逸品だよ。
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手紙に書いてある通り、封筒の中にカードが一枚入っていた。
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サクラ□□
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