表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

物知り過ぎの明智くん

 トシヨンがオチャコに代わって、どうして「お寺ミステリー探索」というテーマが生まれたのかを、丁寧に説明する。

 明智くんは納得できて、快く賛同を言葉に表わす。


「ああ、そういう意味があったのだね。うん、分かった。それじゃ早速、お寺ミステリー探索に出掛けよう!」

「うん。まずは、敷地をぐるっと一回りしてみようよ。あたしの知らない場所も、まだ沢山あるし」

「わたしも、ここへくるの二度目で、クリスマス・パーティーの時は、境内の真ん中に、ずっといたから」

「そうだね。僕が先導するよ。後を歩いてきてよ。あ、それと、マムシが出没するような箇所もあるから、二人とも、よく気をつけてね」

「え、マムシ!?」

「まあ危険だわ。わたし、怖くなってきちゃった」


 女子二人は、少しばかり驚かざるを得ない。日本各地に分布する、その毒蛇のことを知っているけれど、まだ一度も直接に見たことがない。

 しかしながら、オチャコは勇気を奮う。


「探索に危険はつきものよ。でも大丈夫、トシヨンのことは、あたしがちゃんと守るからねっ!」

「うん、でも……」


 トシヨンは、オチャコがマムシに立ち向かって噛まれるという、とても悪い光景を想像してしまい、ますます不安が募るのだった。

 ここへ明智くんが、アドバイスをしてくれる。


「マムシという蛇は、なかなかに臆病で大人しいから、こちらから手を出さない限り、危険が及ぶことは少ないと思うよ。もし出てきても、騒がずにね。相手も人の気配を感じたら、すぐ逃げるだろうし」

「うん、分かった。トシヨン、聞いたでしょ。安心して」

「そうね。マムシを見つけても、わたし、叫んだりしないようにするわ」


 こうして三人のお寺ミステリー探索が始まる。

 広い境内の片隅に、奥へ通じている小路があるので、まずはそちらへ進む。桜の木が十本くらい並んでいて、もう緑の葉がずいぶんと茂っているのが分かる。


「なんか、凄くいい匂いがするわ」

「うん、これって桜餅と同じ香りよ」

「落ちた葉が、朽ちて発酵するから、こんな芳香がするようになるのだよ」

「へえ~、そうなのかあ!」


 オチャコは、昔から桜の花を好きだけれど、今回は葉っぱも好きになった。

 しかしながら、季節的に、今はイヤな虫が大量に発生しているので、あまり近寄らないことにする。この桜の小路を過ぎると、右手側に直径十メートルくらいの池がある。

 色取りどりの模様をした錦鯉が五、六匹で集まって泳いでいるので、オチャコが「鯉さん、こっちに()()!」と駄洒落を言う。それで、明智くんとトシヨンが、つき合いで、軽く「あはは」と笑ってくれるのだった。


「餌はあげないの?」

「うん、いつもは特にあげていないよ。鯉は雑食性で、なんでも食べるから、オタマジャクシでも藻でも、あと池に落ちる昆虫とか、餌は豊富にあるだろうし」

「そっかあ、それにしても、マムシや桜の葉のこと、それに鯉のことも、ホントに光男さんは物知りね?」

「それほどでもないよ」


 少しばかり照れる明智くん。

 その一方で、トシヨンが憂いを含む表情をしている。


「食べられちゃうオタマジャクシ、ちょっと無情だわ……」


 オチャコとは対照的に、しんみり語っている。そんな彼女も同じ十四歳。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ