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お寺ミステリー探索

 日差しの強い境内の小路を、並んで進む三人。

 先頭を歩くオチャコは、「運よく帽子を貰えてホントによかったわ」と思いながら、先ほどから少なからず気になっている疑問を、ふと口に出す。


「それはそうと光男さん、監視カメラなんて、昔からあったっけ?」

「いいや、つい最近になって設置したものだよ。実は十日前、夜間のうちに、僕の大切な自転車が盗まれちゃってね」

「まあ! 光男さんの自転車を盗むだなんて、あたし絶対に許せないわ!」


 顔を赤くして憤慨するオチャコである。

 その一方で、明智くんは、いつもの冷静さを保っている。


「ありがとう。もう、ずいぶんと古くなった代物しろものだけれど、この僕にとっては、とても愛着の深い一台だったから、それを知った時の悲しみは大きかったよ。それで貯金のほとんどを使って、あのロードバイクを買ったのだけれど、また盗まれてしまってはいけないから、残りの貯金をはたいて、監視カメラも購入して、取りつけたのだよ」

「そっかあ、予定外で出費がかさんだわね。あっ、でも犯人は見つかったの?」

「警察に被害届を出してあるけれど、まだ逮捕されていないよ」

「それじゃあ、未解決の自転車窃盗事件ってことね。よおし、今からでも、捜査本部を立ち上げないと!」

「いやあ、それはいいよ。せっかく遊びにきてくれているのだから、もっと有意義なことをしようよ」

「えっ、まあ、そうだわねえ……」


 捜査本部の立ち上げも、オチャコにとっては有意義なこと。それが否定されたように感じてしまい、ショックで肩を落とすのだった。

 そんなオチャコに代わって、トシヨンが別の提案をする。


「このお寺の敷地、くまなく散策してみるというのは?」

「あ、うん、それも面白そうねえ。どうかなあ、光男さん」

「二人が望むなら、そうしよう」


 自分が住んでいるお庭だから、明智くんにしてみれば、今さら散策もなにもあったものではないはず。でもそういう言葉や態度を、砂粒の大きさすらも出さず、笑顔で賛同してくれる。こんなに他人を深く思いやる、優しい心を持っているところも、オチャコが彼を好きでいる理由の一つ。

 少しばかりして、明智家の主屋おもやに到着する。オチャコのショルダーバッグとトシヨンたちに渡したお土産を、明智くんが代表して、涼しい部屋へ置きにゆくことになった。

 待つ間にオチャコは、いつもの元気を取り戻す。


「ねえトシヨン、これからする散策のテーマは、なににしようか?」

「え、テーマって?」

「ほら、テレビのロケなんかだと、《未開の秘境探検》とか、《幻の遺跡調査》とかいう、そんな雰囲気のあるタイトルになっているでしょ?」

「うん」

「だから、あたしたちが今から始める納本寺の散策も、どういうテーマにするか、決めとかなきゃ!」

「そ、そうね……」


 ここへ明智くんが戻ってきた。それでオチャコが叫ぶ。


「あっ、決めたわ! 散策のテーマは、《お寺ミステリー探索》にしようよ。ねえ、それがいいでしょ、光男さん!」

「えっ、なに、どういうこと??」


 話の流れをサッパリつかめない明智くん。たった今まで、この場を不在にしていたのだから、これは無理もないこと。

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