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二度目になった独り旅

 ゴールデンウィークが終わってから最初に迎えた週末、日本晴れがフルパワー全開モードで全国に広がった。

 今日はオチャコが一人、生まれ育った滋賀県長浜市を訪れている。これは人生で二度目となった独り旅である。()()()()というのは、この少女のニックネームで、本名は浅井あさい茶子ちゃこ、おとめ座の十四歳、血液型はAB。今年の一月に東京へ引っ越さざるを得ない状況となってしまい、私立北琵琶(きたびわ)学園、中等部、二年(ウメ)組の仲よしクラスメイトたち、特に生まれて初めてできた()()明智あけち光男みつおくん、そして大親友の()()()()こと前田まえだ利代としよちゃんと、涙のお別れをしてから、かれこれ四ヶ月が過ぎている。

 オチャコは、駅前のレンタサイクル店で借りた自転車に乗り、遠く距離を隔てた恋愛でも、毎日のようにメッセージのやり取りを欠かさない、そんな唯一無二の相手と再会を果たすため、明智くんのお家を目指している。今日そこにトシヨンも訪れて、オチャコと会うのを楽しみに待ってくれているという。

 だから胸に抱く期待感の大きさも二倍に膨らませ、ちょっぴり懐かしくなっている風景を横目に、爽やかな風を切って、ひたすらペダルをぐ。


「ふぅ、気持ちいいわねえ。こっちの空気、やっぱり好き!」


 逸る気持ちを抑え、少なからず安全運転を心掛けることも忘れない。


「ここで怪我でもしちゃったら、この独り旅、そして待ち望んできた彼氏と親友とのダブル再会が、すべて台なしになるものね」


 しばらく走って、納本寺のうほんじに到着する。ここが明智くんのお家で、去年の末にクリスマス・パーティーが開催された場所でもある。

 境内に入ってからは自転車を降りて進む。その先に屋根つきの駐輪場があって、まだ新しくてピカピカしているロードバイクが置いてあるので、その横のスペースに、オチャコが借りてきたサイクリング車を並べて停める。


「やあ、茶子さん」


 突如、オチャコの頭上で、聞き覚えのある声がした。


「光男さん!?」

「そうだよ」

「まさか!!」


 オチャコは、明智くんが屋根の上から話し掛けているのかと思い、駐輪場の外へ駆けていって、確かめることにする。

 しかしながら、先に明智くんが答えを知らせてくる。


「マイクとスピーカーを内蔵した監視カメラがあるのだよ」

「えっ、ああ、ホントだあ!」


 上を仰ぐと、屋根を支える柱に、お店にある防犯カメラを小型にしたような機器が設置されているのが見えた。


「今から行くから、そこで待っていてくれるかな?」

「うん、いいよ、了解!」


 オチャコは、監視カメラに向かって、威勢のよい返事をした。

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