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「ダンジョン攻略をなさる方は大概、冒険者という職業となります。あまり儲かったりするわけではないのですが……まあ攻略すれば億万長者ですからな」
思わず宝くじを買い続けて、絶対に当たらない人を思い出した。
そんな不憫なことにならないよう祈るとして。
「まあ、大体このくらいですかな」
「ありがとうございました」
じゃあ次のことを聞こうか。
「魔法ってどうやって使うんですか?」
「魔法使えないのにダンジョン攻りゃ……いだっ!」
「お前はもう黙っておけ! ダンジョン攻略は戦闘が全てというわけではないわ!」
グリはまた頭を引っ叩かれる。
反省しないやつだなぁ……。
「魔法は魔力を操りながら呪文を唱えるんですよ。例えば……〈プチファイア〉」
村長がそう言うと、村長の指先に炎が現れた。
「おお! すごい!」
手品でも何でもない、ガチの魔法だ。
「ふふふ……それでは私が、極大魔法も見せてあげましょう!」
「え!? この建物は大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ! では〈ヘルファイア〉」
村長がそう言うと、村長の手の中にハンドボールくらいの大きさの炎が現れる。
おお、それで!? からの!?
「どうですか! コレが極大魔法です!」
そう言って村長はハンドボールをデデーンと見せつけてくる。
え、ちっちゃくね? それが極大魔法?
驚きで俺が声も出せないでいると、グリが口を開いた。
「流石アック爺! こんなデカい炎は見たことねぇぜ! 見ろ、ソウタも驚いてやがる! ソウタにこんな大きな炎は出せないだろ!」
そう言ってパチパチと手を叩く。
いや確かに驚きで声が出ないけどさ!
だってコレは流石に小さすぎるだろ。
いつの間にか俺のことを名前で呼び出したグリは、やっぱり頭をぶたれた。
「ソウタ様を馬鹿にするでないわ! お前はさっさと部屋を出て行け!」
そうしてついに追い出されてしまった。
「魔法を使う練習はしなくても、魔法は自然に使えるようになりますよ」
「そうですか………」
まあもう使わないけどな。
だって〈ヘルファイア〉でこれとか、なんか色んな意味で燃えない。
「じゃあこの村で少し過ごしているので、また何かあれば言ってください」
「それではごゆるりとお過ごし下さい」
そうして俺は、村長の家を出て行った。