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「方向的に茨城の辺りか……」
引き返してから少しして、今度は建物っぽいのが見えた方角を確かめた。
北東の方角だしやっぱり茨城県の辺りに何かある。
「今度はちょっとちゃんと準備して行くか」
通貨とかどうなっているだろうか。
多分使えないけど財布も持って行こう。
「貯金通帳とか数字の書いてあるゴミだよな……」
でもこれも一応取っておこう。
適当な袋や鞄をたくさん用意して、家にあって使えそうなものをどんどん詰め込む。
漫画とかも暇つぶしには良さそうだ。
車あるし、わざわざリュックサックに詰め込む必要もない。
欲張っていくか。
「腕時計……これクロ◯スのいいやつだ。こんなのうちにあったんだ……」
家財整理をすると意外と良いものが出てくるなんていうけど、マジだったんだな。
「あ、コレは」
高校時代にちょっと描いてた絵。
未使用の絵具あるし……これも持ってくか。
「ふぅ………」
そんなこんなで懐かしのものやら何やらを一切合財詰め込んで、準備は完了した。
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「カーナビつけたら空飛んでるなんてよくあったけど、建物突き抜けたことはなかったなぁ……」
一応カーナビで茨城行こうと試してみたけど、そもそも道が完全になくなっているので無意味だった。
古いカーナビあるある、のさらに発展版をする羽目になるとは。
カーナビを切って道無き道を行く。
この辺りで交通渋滞していてムカついたのはいい思い出だ。
マジで。
『なくなって・初めて分かる・大切さ 荒木蒼太』
渋滞とかウザいだけなのに、なくなったら無くなったで寂しい。ツンデレってやつかな?
多分違う。
なんだかんだと、交通マナーもクソもないのでボーッとしながら運転する。
ボーッと生きていたら怒られてしまう世の中も、もはや跡形もない。
意外に続いてたりしてな。
チ◯ちゃん死なないし。
「おっ、そろそろ輪郭が……って意外と小さい?」
街というより村、ほどの規模の集落があった。
そのまわりはやっぱり野原になっているけど、どうやら道はそこそこ整備されているようだ。
俺の家側に道はないが、千葉の方角に道が伸びているのが見えた。
「車とかロストアイテムだったり……」
唐突に不安になってきたので、集落から遠すぎず近すぎない距離に車を止めておいた。
そのまま集落へ近づいていくと、そこはどうも中世感漂う集落だった。
レンガ造りの建物なんて明治時代か!
タイムトラベルとか嬉しくないぞ?
でもそれも多分違う。明治時代ならまず東京にもっと建物が立ってるはずだしな。
いよいよわからない。
一体どうなってるんだ?
なんて考察しながら歩いていたら、集落の門が見えてきた。