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目が覚めてカーテンを開けると、荒野がひろがっていた。
掲示板に書き込んだら『よくあることですよね!』って返って来そうな事態が目の前で起こっている。
「うーん、分からん!」
外に出てみたらバリアは完全になくなっていた。
つまり俺が寝ていた10日間で、東京が荒野になるほどの何かが起こったということだ。
スマホを見ると、時間は朝8時。
外に出たら外の時間に合うかと思ったけど、そんなことはなかったようだ。
オフラインのゲームや計算機はまだ動くから、壊れたというわけでもなさそうだ。
大切に使おう。
「えっと、とりあえず朝ご飯かな?」
荒野の中で家と1人。
孤独なロンリネスがアイソレイトを起こしそうだ。
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現代じゃ『孤食』と呼ばれて悪とされていた1人きりでの食事は、面倒なので食パンと缶詰にした。
バリアから解放されて自由になったし、記念日ということで奮発して桃缶いくか、桃缶。
安い黄桃じゃなく、リッチに白桃の缶を開ける。
あとは冷蔵されてなかったハムと焼かれてないパンを用意して、準備完了。
「はぁ………」
色々ありすぎて混乱していたが、食べれば頭が動き出すとはよく言ったものだ。
もう一枚、パンを出してモキュモキュいただく。
「核戦争が起きたとしても、もうちょっとマシじゃねえのかコレ………?」
見渡す限りの荒野、といっても遠くの方に建物っぽいものは見える。
ちなみに富士山が残っていることは確認できた。
以前の東京じゃ庭から富士山は見えなかったんだけどなぁ……
「ともかく情報が欲しいわけなんだが……」
こうなると、いかに自分がネットとテレビに頼っていたかを実感する。
ともかく不安でしょうがない。
精神と◯の部屋とか絶対入れないわ。
ブレイクファストを終えたら、桃缶のゴミをまとめて縛ってポイとゴミ箱に捨て、再び外に出る。
「セイタカアワダチソウっていうんだっけ?」
外はススキっぽい植物がいっぱい生えていて、何年も手入れされてませんでした感を漂わせている。
本当にこれ10日しかたってない?
あの博士のことだ、うっかり計算ミスしてる可能性もあるよなぁ……