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「うぉい!? それってまさか……」
「あー、出られないね」
なんて呑気に言う博士。
こいつ、人ごとだと思ってに……!
「どうしてくれんだよ!?」
「え、どうもしないよ? もうこうなった以上、君の報復も怖くないし? 実験に使えなくなったモルモットにきょーみない」
想像以上のクズだった。
だがこれはどうしようもない。
ここで騒いだところでどうにかなる話でもないし、助けを求めても無駄だ。
せいぜい下手に出て情報でも引き出すか。
「おい、それなら今まで実験に付き合ってあげたお礼として情報残してけ」
「えー、まあいいけどさ。何が知りたいんだい?」
気怠そうに答える博士に苛立ちを覚えるが、ここで電話を切られてしまえば終わりだ。
我慢しよう。
「まずは時間の話だ。時間が隔離されてるって言うが、それはつまりどういうことだ」
まずは基本設定を聞かねば。
「あー、君の家の敷地の内側は現実の世界の時間の進みの1パーセントに減速してある」
つまりここの1年は100年。10年は1000年か。
「じゃあこのバリアが切れる条件は?」
「うーん……博士が作った装置にエネルギーを供給する機関に終わりが来たら?」
「どこから供給してるんだ」
「東◯電力に無断で……」
博士ェ……どうやって忍び込んで設置したんだ。
「ちなみにもう一度入って壊してくるとかは?」
「東京中が停電するけど?」
うん、一生解除されないね。
「じゃあ最後に、なんで電話が通じてる?」
「あー、これは勝手に君の家に設置しておいた、博士と電話が繋がる機械のおかげだよ?」
なんてものを設置してやがる。
「じゃあ博士以外とお話しできる可能性は?」
「ゼ・ロ♡」
詰んだ。
じゃあこのまま、食料が尽きるまでここでなんとか命を繋いで、最後は誰にも看取られずに餓死と。
しかも暇になるのにレジャーもなし。
餓死する前に暇で死ぬわ。
「ん、わかった。じゃあもう俺はこのまま死ぬってことでおけ?」
「そうだね……残念だよ」
モルモットが死ぬのがだろ?
「じゃあな、博士」
そう言って俺は電話を切った。
そうして家の中に戻る。
さて、どうしようか。
この家はつまりガスも電気も通じないと、そういうことだ。
太陽光発電パネル付きの家だから、若干は電気使えそうだけど、どうなんだろう。
火はライターがあるから当分大丈夫。
水でないのはきついな。
最近は震災が多かったから、保存用の水はまだ何本か残ってるけど……
そんなこんなで1日が終わろうとしていた。
これで明日起きたら10日後か。
なんだか不思議な気分だなぁ。
俺はベットに横になった。
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ブチッ。
電話が切れる。
「あ、いっけね!」
大切なことを忘れていた、と博士は気付く。
「時間減速1パーセントって言ったけど間違いじゃん!」
博士は手元の紙にサラサラと計算した。
「あー……ま、いっか!」
博士は紙を放り投げた。
放り投げた紙が宙に舞う。
『時間減速1/10000パーセント』
そう、紙には記されていた。