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「ニッキー!」
そう言って駆け寄った俺は、冒険者たちから止められる。
「おい! 危ないから近づくな!」
「喰われるかもしれないぞ!」
いや、こんな扱いをされてたらニッキーだって涙を流すだろう。
そもそもニッキーは人を食べないし。
生八ツ橋のニッキ味が大好きだし。
「ニッキー、どうしてこんなところにいるの?」
「ボクもよく分からないんだ。中の人もいなくなっちゃうし………」
「ニッキーッ!!! ニッキーに中の人はいないでしょ? 子供の夢を壊しちゃダメだ!」
「そ、そうだったね! ハハッ!」
そんなやりとりをする俺とニッキーを見て、冒険者たちも気が抜けたようだ。
するとグリとオスカルが来た。
「ソータ! お前この化け物と友達なのか?」
「おいグリ。このネズミは化け物じゃないぞ」
ニッキーをペットのネズミじゃなくてドブネズミにしたのはマジで運営のミスだと思います。
おかげさまでちょっとだけ凶悪な顔つきになってるから、確かに怖がる子も多い。
でもそこがいいんだよ!
「ソウタ? ニッキーってなんのことだ?」
「オスカルさん、こいつの名前ですよ。そうだよ、ニッキー、自己紹介してくれ」
そう言うとニッキーはハッとして、
「ハハッ! ボク、ニッキー! 好きなものは生八ツ橋のニッキ味! みんな、仲良くしてね!」
冒険者たちやオスカル、グリは唖然としている。
「じゃあ一体こいつはなんなんだ?」
「マスコットキャラクターですね」
「なんだそれ?」
不思議そうな顔をしている。
そういえば誰もそんなものを知らないのか。
「このダンジョンのイメージキャラ……うーん、このダンジョンを代表するキャラクターです」
と、言ってもみんな頭にハテナを浮かべている。
全然何もわかっていないようだ。
「そのキャラクター? ってのはなんだか知らないが……なんでそんなことをソウタが知ってるんだ?」
あー、そうだった。
適当な言い訳をしないといけないのか。
「お、俺はその、世界中のダンジョンを調べるダンジョン研究者でして………」
さすがにこれは通用しないか?
「そーだったのか!」
「すげえなソータぁ!」
「ダンジョン研究者か……」
「なるほど……」
まあ反応はそれぞれだったが、受け入れてくれたようだ。
「さて、じゃあこのダンジョンを攻略しましょうか」
さあ、気を取り直していこう。