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ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle- 〔下〕  作者: 長岡壱月
Tale-75.聖都と見(まみ)えの白博士
46/436

75-(0) 確保失敗

※旧版(現〔上〕巻)の初回掲載日=2016.7/6

 二刀の剣閃が瞬間閃き、切っ先はぴたりと軌跡を描いてから止まった。

 ジークが駆けた、その射線上の傭兵達が次々に倒れる。それでも全滅こそ免れたのは、多

少なりとも力量を測れたからか。或いは彼自身が本気で殺そうとまでは考えていなかったか

らか。

「くっ……。退け! 退けェ!」

 男達は突然の強襲と、何より自分達を邪魔してきた人物の顔を見て逃げ出した。勇猛果敢

な命知らずは騎士がやることだ。そこまで命の無駄遣いはしたくない。彼らは街の路地裏へ

路地裏へと逃げ込み、急ぎ任務の失敗を報告することにした。


「──ジーク・レノヴィンが、あの者を?」

「どういう心算でしょう? 彼にメリットは無い筈ですが……」

 事前に支給した魔導具を使わせ、傭兵達からの説明を聞く。

 そこは明かり取りすらない真っ暗な部屋だった。ただ円卓の上に照明だけが置かれ、そこ

にはぐるりと仮面とマントで素性を隠した者達が座している。

 彼らこそリストン保守同盟──国や地域を越え、その思想信条イデオロギーにおいてのみ結束して集ま

った有志らの集まりである。故に彼らは多くの場合互いの事を知らない。知る必要がない。

政敵に狙われるというリスク以上に、面が割れることで内に抱えた想いを語り合う場所を失

うからだ。

 仮面越しのくぐもった声で彼らは怪訝に唸っていた。円卓上にはぼやっと粗く現地の様子

が映し出されており、それを背景に先の傭兵達がこちらに顔を覗かせている。

『申し訳ありません。女一人始末するだけだったのに……』

『レ、レノヴィンは無理ですっ。自分達では手に負えません!』

「……ふむ。仕方ない、か」

「そう責めることはない。彼らから放たれた者だ。お前達がぶつかってもはたして上手くい

っていたかどうか」

 映像ビジョンの向こうで傭兵達がさぁっと青褪める。全く解っていなかった訳ではないとはいえ、

始めから自分達は捨て駒だとさらりと白状されたようなものなのだから。

 傭兵達の何人かが物陰からジークとレナ、そして件の白衣の女性を窺っている。

 どうやら自分達から彼女を助け、そのまま手を差し伸べているようだ。当の本人は唖然と

なった後、ぽやっとマイペースに受け答えしているようだったが。

「やはり面識がある、という訳ではなさそうだな」

『はい。おそらくは』

「そうなると……何も知らずに飛び込んできた訳か。相も変わらず癪な奴よ」

「しかしどうする? このままでは折角の好機を失うことになるぞ?」

「ああ。だが、今レノヴィン達のいる前で手を出してその警戒を引き出すのは宜しくない。

それに今あちらにある兵力では心許ないしな」

 うーむ……。円卓の一同は、そうめいめいに仮面の下で唸った。音もない沈黙が暫し場を

支配する。やがてたっぷりの間を経て、彼らの視線は上座に着くとあるリーダー格の人物へ

と向けられていた。

「……一旦“あの方”に具申してみよう。相手が相手だ。慎重を期さねばならない。向こう

の兵達はそれまで退かせる」

 然り。残りの仮面達は追従するように頷いた。内一人が映像ビジョン越しに伝え、傭兵達も合図を

送り合って撤収を開始する。

 魔導具の通信が切れた。フッと再び円卓の場に沈黙が下りる。

『──』

 照明が落ちた。誰も何も、あたかも始めからそこには無かったのように、不気味な暗がり

だけが広がっていた。

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