カナリアの聲〜檻〜
※狂った作者による狂った物語です。胸糞注意報、閲覧注意
「イワン様、ごれはお返じしますわ゛」
私は羽をもいだ小鳥の標本にした死骸を渡す。イワン様は驚愕したように小鳥の標本を受け取った。
「これは君がやったのか……?」
「え゛え゛、ウェイン様や゛イワン様が私の゛声を簡単に奪っだように゛……ごれで私も゛一緒です゛ね」
クスクスと嗤いながら足元で咲き誇る美しい花を踏み潰す。美しい花も気付かなければ蟻のような存在だ。犠牲にする人、犠牲にされる人がいるのなら私は犠牲にする側の人間に変わってしまった。
「何故……殺した?気に食わなかったのか……?君が欲しがっていた鳥だったろう?」
「美じい姿のまま死なせであげだの゛です。私のよう゛に醜ぐなる゛前に。その゛方が幸せでしょう゛?」
私は暗い笑みを浮かべながら両手でイワン様の顔を掴み引き寄せ、口付ける。ありきたりな二番煎じの愛の物語なんて退屈過ぎて聴きたくも見たくもない。
私達は愛を捜すより、私達二人で壊れた愛を作りましょう?
狂わせた過去と壊れた時間、これでいいのかなんて私に聞かないでね。ねえ、イワン様も羽をもがれた鳥みたいに堕ちていきましょう。大丈夫、私もイワン様と一緒堕ちていくから。
「ね゛ぇ、イワン様……二人で愛じ合い゛まじょう゛?」
私の唇でイワン様の言葉を塞ぐ。私達に言葉など必要ない。行かないで、もう消えて、愛してる。過去の罪と罰を覗いて、善悪もない、最後まで一緒に行きましょう。
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イワン様は何度も謝りながら私を抱く。その度に私はイワン様に笑って口付ける。泣きながら私を抱きしめるイワン様。……私は私が死ぬまで騙して鳴くの。
貴方は温かい。でも何故か心は冷えていく。だから、このまま二人で壊れた愛を作りましょう?どんなに愚かな行為だと周りから言われても。
ねぇ、イワン様。壊れた愛の先には何があるのでしょう。
ベッドの上でイワン様は眠っている。私はゆっくりと目蓋を開けイワン様を起こさないように、イワン様の綺麗な顔の輪郭をなぞる。隠していたナイフを握り、イワン様の上に跨りナイフを突き刺そうとした瞬間、イワン様は目を開け笑っていた。
イワン様は私の流れ落ちる涙を拭い、優しく微笑む。暴れるでもない、叫ぶでもない、恐怖の色ですら見えない。何故、何故、何故。何故笑っていられる。
イワン様は私のナイフを握る両手を掴み、まるで刺すようにと喉元に誘導する。私は震える両手でナイフをイワン様に向かって振り下ろした。
だが、私が突き刺したのはイワン様ではなくシーツだった。出来なかった、殺せなかった。イワン様の全て分かっていたような笑みが見たかったんじゃない。醜く鳴き叫ぶ顔が、声が聞きたかったのに……どうして。
私は握っていたナイフを離し、震える両手で顔を覆う。何故、涙が溢れるのか。何故、殺せなかったのだ。こんなにも……こんなにも憎いのに。どんな顔をすればいいかすら分からない。結局、私は何者にも成れないただの屍だったのだ。……ならば最後まで醜く鳴いてやる。
離したナイフを掴み自分の喉元へ突き刺そうとした。だが、イワン様がナイフを強く握り、血が流れるのも気にせずナイフを取り上げ部屋の隅へと投げ、そのまま抱きしめられる。
「カナリア……俺は強がる事は偉いと勘違いして、弱さを受け入れずカナリアを傷つけた。好きなのに誤魔化して、カナリアから差し出された手を振り払って、謝らなかった。生まれてきた事を後悔して、抱えきれないものを自分独りで背負った気になってて……。カナリア……少しずつでいい……一緒に生きてくれないか?」
「ゔ……ゔあ゛あ゛あ゛……あ゛あ゛ぁ」
醜く鳴く私をイワン様は強く抱きしめる。……そんな資格なんて私にはないのに。私だって色々なものを傷つけた。今だって貴方を傷つけている。
私はゆっくりと消えない痛み抱いて、イワン様の背中を抱きしめた。
……ずっとずっと続けばいいのに。私とイワン様が溶け合って……私はイワン様の腕の中で深い深い眠りに落ち、未来を描き続けた 。
此処が私の檻だって……幸せな、最初で最後の夢。
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目を覚ませば、夢は消える。
醜い聲のカナリアは元には戻らない。
窓から見える朝焼けの空には、小鳥一匹すら見えない。
空を見おろして、空に手を伸ばす。
開け放たれた窓際に座り、優しすぎる空を背負って、空を仰ぎ私は笑う。
「……カナリア?」
……ねぇ、イワン様。
これが、私の愛なの。
最後如何なったかは読者様の御心次第です。ハッピーエンドかもしれない、バッドエンドかもしれない、メリバかもしれない。ありがとうございました。