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 1年は目まぐるしい。初々しい入学式から衣替えを終え、夏服にも慣れてきた7月初旬。


 今日も彼女は美しい。

 車から降り立つ御影様を校舎から見守るのは新聞部1年 郡部 萌々だ。


 もうすぐ夏休みが始まってしまう。来月は高校総体や学園祭で慌ただしい。

 なんとしても長期休み前にお近づきに---弱み、いや、秘密を握らなくては!



 エリートばかりの特進科1年1組所属の御影様。

 普通科3組の郡部も決して頭が悪い訳ではなくむしろいい方だが、普通科と特進科の壁は厚い。体育が一緒じゃないのだ。

 特進科、普通科、スポーツ科、授業内容も違うから体育の割り振りも違う。クラス対抗なんて最近終えた体育祭でしか出来ないのだ。年に一回なんて七夕かな?


 郡部の悩みは尽きない。温水プールの授業が1年から順番に回ってくるのだが、気付いた時には郡部のクラスの番だった。つまり、御影様の水着姿は今年度は終了している。濡れ髪すら見ていない!

 スポーツ科の体型でも着やすいセパレート型のタンキニ。露出が少なく、スカートもかわいいと制服に次いで評判のいい水着。御影様の黒髪にもよく似合っただろうに、それを、まさか、見逃すなんて

「来年はプール開きも記事にしなきゃ」部長にそう進言しよう。


「温水プールの開閉なんて記事になるか」と一蹴されるまであと数時間。















「男子は女子の後なんですね」

 夏休みを前にクラスで話すことと言えば、レジャー話だ。

 御影様の唐突な発言に意図を読んだ傍らの男子が相づちを打つ。

「そうですね、僕らはプール授業まだですから」

「御影さんはどこかへ出かけられるの?」

 栗毛の女生徒が話しかける。

「親戚が集まるので、その準備があります」

「景山、学園祭の準備は夏休み後で間に合うのか?」

「1年は調理禁止だから、飲み物売るか展示やレクリエーションくらいだって先生が言っていただろ。直前で問題ない」

 和気あいあいと話す姿は普通科と大差はない。

「必要なら買い出しの車出せるぞ、トラックの方がいいか?」

「テントを立てるならうちのにやらせようか?」

「そうなのね、同じ避暑地に行くのなら遊びに行こうと思ったのだけれど」

「今よろしいかしら?御影さん、月始めに父がご挨拶にうかがいたいと」

 内容は普通と程遠いが。

「学園祭は直前で大丈夫だと言っているだろ!そもそも実行委員に言ってくれ」

「学級委員だから似たようなもんだろう」

「なんのために分けているんだ!?」

「御影さまー副委員長が不親切ですー助けて下さーい」

 不意に声をかけられ、長い睫毛をまたたかせる。

「・・・よろしくお願いいたしますね、景山副委員長」

 委員長に小首をかしげながら微笑まれては、無下な対応は出来ない。

「了解いたしました。御影様」

 背後の男子が大笑いするのを景山はじっと耐えた。

学校行事とクラス分けは東日本にある某マンモス私立高校と自分の出身高校を参考にしています。

1組から特進科、普通科、スポーツ科の順番で組が振られ、基本的にその順に学業の成績がいいです。

スポーツ科は遠征もあるので他科とほぼ関わりない感じです。

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