しあわせの唄
私の悲しみは私のものであって
あなたのものではない
私の苦しみは私のものであって
あなたのものではない
私の痛みも
私の嘆きも
私の辛さも
私のむなしさも
すべて私のものだ
あなたのものではない
あなたの喜びはあなたのものであって
私のものではない
あなたの楽しみはあなたのものであって
私のものではない
あなたの強さも
あなたの愉悦も
あなたの快楽も
あなたの満ち足りた心も
すべてあなたのものだ
私のものではない
誰かを理解したと思わぬがよい
それはきっとまぼろしであろうから
誰かに理解されたと思わぬがよい
それはきっとまやかしであろうから
私はあなたではない
あなたは私ではない
あたりまえのこと
あたりまえの
誰もが己の道を歩む
己だけの道を
あなたの隣にいる誰かでさえ
あなたの道を歩くのではない
あなたの道の隣にある
その人の道を歩いている
道が重なることはない
触れられるほどに
近付くとしても
道はいつか必ず別れる
唐突に
あるいは少しずつ
すべてを理解したと
その傲慢が瞳を曇らせていないか
すべてを理解してくれていると
その怠惰が手を腐らせていないか
あなたの隣を歩く誰かは
あなたと違う場所を見据えていないか
彼の、彼女の描く未来に
あなたは存在しているか
誰かを理解したと思わぬがよい
気付いたときには手遅れであろうから
けれど
そうと知ってなお
あなたがすべてを理解したいと思い
あなたのすべてを理解してくれると
信じるに足る誰かが
あなたの隣で
あなたと同じ景色を見据えて
あなたと同じ速さで
歩いてくれているのだとしたら
それをこそ私は
幸せと呼ぶ
あなたが私を理解できないという事実は、あなたが私を理解してくれると私が信じることを否定しない。
理解できないと知りながら、理解してくれると信じることができるのなら、それはきっと、愛と呼ぶにふさわしいのだと、私は思うのです。