No,2 『家族』
ねむい
馬車の荷台に積まれた沢山の木箱が、ガタガタと忙しなく揺れ動いている
そして、その木箱の合間に僕はいる
村を主発してから数日、王都へはあと少しのところまで来ているらしい
小休憩の時に荷台から降りて聞いた
しかし、これまた困った
荷台に乗せられるならまだしも、完全にエナとは隔離されている状態だ
ここ数日の食事は到底食べ物とは言えない物ばかり、一度エナの手料理が食べたいと兵士に行って見たりもしたが無視された
殴ろうかなと思ったけど、今すぐ全員に殴りかかってエナの手料理を食べようかと思っている今現在、我慢している
「あぁ、早くエナに会いたい(そして手料理が食べたい)」
「そんなに会いたいか?なんだ、お前勇者エナリーゼが好きなのか?」
「ん?」
背後からいきなり現れた男
髪をオールバックにしているいかつい顔のおっさん
何度かこのおっさんが指示を出しているところを見たことがある
きっと料理長かなんかだろう
俺もエナに頼まれたことは断れない
下手に機嫌を損なえばご飯がなくなるからな
それにしても、料理長が何故鎧を? 自分で食材も狩るのか?
そうだとしたら尊敬に値する料理人だ
彼の料理も一度食べて見たいな
「好きって言うより、普通に会いたいだけです(お腹空いたんで)」
「恋人、というわけではないのだろう?」
「えっと…僕と彼女はそんな面倒くさい関係ではないですよ。もう、家族同然の存在ですからね(毎日ご飯作りにきてくれてたし)」
好きとか嫌いとかエナに対して思うことはあるけど、それはあくまで家族としてだ
恋人とかそんな特別な関係というか、面倒な関係になりたいとは思ったことは一度もない
だって、今までの日常で僕はもう満足していたから
エナと僕と、家族みんなで楽しくご飯を食べる
それだけで、良かったんだけどね
「エナが勇者に選ばれて、僕は少し残念だったんですよ」
「ほぉ」
気軽に会えないし、ご飯も作ってもらえなくなるってすぐに分かったからね
「離れ離れになるかもしれなかったけど、エナがなんとかしてくれた。一緒にいたいって(ご飯を作ってあげたいって)言ってくれたから、僕も彼女と一緒にいたい」
だって僕たちは家族なんだ
家族が離れ離れになるのは辛いし、ずっと一人でいるのは寂しいと思うから
特に舌と胃が
「エナが寂しいって言ってたし、それに僕も今すぐにでも会いたい(腹がエナの料理を欲している)から、会わせてもらっても良いですか?」
「……」
料理長さんは俺の顔をまじまじと見ていて、返答はない
も、もしかして顔に何か付いてるのかな?
あっ、髭剃り忘れてる。これかも……
「今のお前では、エナリーゼには会えない」
「えっ」
「結果を出し、巡ってくる機会があれば摑み取れ。俺から言えるのはそれだけだ」
「そ、そんな(あの超美味いご飯がしばらく食べられないだって!?)」
遠くで料理長さんが出発の合図を出している。
僕はただ呆然として立ち尽くしていた。
そして翌日、僕らは無事に王都へと到着した。