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第10話 二章 蒼緋蔵邸の訪問者(4)

 妹の緋菜と別れた雪弥は、一階に集っている家族や客人から離れるように階段を上がると、行くあてもなく廊下を歩き出した。昔使っていた部屋へ行くようにして右折したところで、ようやく歩む速度を落として、ふぅっと息を吐く。


 あの子、少し苦手なタイプだなぁ……。


 綺麗だとか妖精さんだとか、よく分からない。そもそも自分の顔は、美麗な兄や妹と違って平凡なのだけれど、と、そう桃宮家の令嬢アリスを思い返したところで、雪弥は「あ」と声を上げて足を止めた。


 去り際の蒼慶が、なんだか言葉数もあっさりとして違和感を覚えていたのだが、大人数での立ち話が始まってから、宵月の姿がなくなっていたのだ。


 記憶を辿ってみると、桃宮がアリスを連れて登場した時には、もう存在感はなかった気がする。しばらく立ち尽くしていた雪弥は、もしやと勘繰って、推測を口の中にこぼした。


「……宵月さん、逃げたな……?」

「失礼ですが、わたくしは少し距離を置いて、皆様を見守っていただけです。決して逃げたわけでも、隠れたわけでもございませんので、そこは誤解しませんように」


 抑揚のない声と共に、肩にポンッと手を置かれた。


 幼い頃に植え付けられた強烈な苦手意識からか、肩越しに無表情な顔が迫ったことを察知した瞬間、雪弥は反射的に後方へ回し蹴りを放っていた。背後にいた宵月が、鞭のように弧を描いたその軌道から、顔色一つ変えず身体を反らして避ける。


 雪弥は、彼の姿を目に留めたところで、ふと我に返った。しまった、うっかり本気で蹴り飛ばそうとしていた……と、肝が冷えてすぐに言葉が出て来なかった。


 振りきった足をぎこちなく下ろす向かいで、宵月が「やれやれ、恐ろしい方ですね」と、襟元を整え直した。


「わたくしだから良かったものの、当たっていたら打撲だけでは済まないような蹴りでしたよ」

「その、すみません。いきなり宵月さんに背後に立たれたので、本能的な嫌悪感が走り抜けて咄嗟に……」

「申し訳なさそうながらも、この状況でストレートに失礼な本音を述べるとは、さすがでございますね、雪弥様。その辺は、昔とちっともお変わりないようで」


 宵月は「まぁいいでしょう」と、位置を確認した蝶ネクタイから指を離すと、淡々と続けた。


「それで、貴方様はシャワーに行かれるのではなかったのですか?」


 問われて、雪弥はギクリとした。そもそも、あれは蒼慶に断りを入れるための口実であって、そのような予定はなかったからだ。服もたっぷり濡れたわけではなく、既にほとんど乾いてしまっていて、湿りが残っているくらいだった。


「その、少し乾いたみたいだし……、太陽の下にいたらすぐに乾きそうだよ」


 そう答えたら、優秀な執事が「なるほど」と短い相槌を打った。


「それでは、庭園へ降りてみますか?」

「外に行ってもいいんですか?」


 驚いて尋ね返すと、宵月が「はい」と言って頷く。


「当時より、更に美しい庭園となっておりますので、散策としては楽しめるかと思います。近くには、増築し改装した乗馬用の場所などもありますよ」

「ああ、確か亜希子さんだけじゃなくて、父さんも兄さんも、乗馬が趣味だったっけ?」

「趣味ではなく、蒼緋蔵家の者は、乗馬技術を持っていなければいけないのです」


 各名家を把握している事と同じで、必須教養なものであるらしい。雪弥は、緋菜が乗馬している風景を想像しつつ、「僕は乗った事がないなぁ」と感想をこぼした。

 思い返せば、乗馬の経験はなかった。戦車や軍用ヘリコプター、ステルス、組織の改造車や大型バイクくらいなものだ。どれも大量の武器が積め込まれたタイプの物で、攻撃するためにしか乗った事がない。


「……う~ん、馬にマシンガンとかバズーカ砲を乗せてもなぁ」

「可愛らしい顔で、恐ろしい事をおっしゃらないでくださいませ」


 雪弥は、そうすれば機会があるかもしれない、と本気で口にしていたのだが、宵月は「冗談はここまでにして、まいりましょう」と言って、道を案内した。


             ※※※


 蒼緋蔵家の本館裏から降りると、東には別館や一族の人間が集う和風の平屋敷、北にいくつかの庭園を構えて、西側に向かうと広大な芝生地帯が広がっている。


 本館に一番近い庭園へと向かい、北方向に進み出してしばらくもしないうちに、立派な馬小屋が見えてきた。その前に数人の男性使用人達が集まっているのを見て、その穏やかではない雰囲気に雪弥は眉を寄せた。


 その中にいた二十代前半の男が、こちらに気付いて「宵月様」と駆け寄って来た。宵月が後ろにいる雪弥をちらりと見やってから、男へと視線を戻して抑揚なく問う。


「一体何事ですか?」

「それが、紐でつないでいたはずの小さな馬が、どこにも見当たらないのです」


 馬の世話係らしき若い男は、急くような口調でそう報告した。集まっていた男達の年齢は、二十代が二人、三十代が三人、六十代が一人いたが、どちらも作業服に身を包んでいる。


 報告を受けた宵月が、キリリとした眉をそっと顰める。すると、この中で一番の責任者らしき高齢の男が、黒い顔に刻まれた皺を、弱ったようにくしゃりとした。


「自分から柵を超えたり、戸を開けたりといった器用な事が出来る年齢の馬ではありません。しかし、柵は降りたままだというのに、馬小屋の戸だけが開いてしまっておりました。私達が駆け付けた時には、他の大人の馬達もとても興奮している状態で」

渡辺(わたべ)たちがいないようですが、探しに向かっているのですか?」

「はい。足に自信のある若い連中を、先に捜索へと向かわせました。お屋敷の高い塀で、敷地内からは出られないでしょう。あの仔馬は遠くまで歩かせた事はないので、まずは近くの方を――」


 その時、遠くから短い悲鳴のようなものが上がるのが聞こえて、話し途中だった高齢の男が口を閉じた。


 雪弥は、真っ直ぐに声の方向を捉えて、目と耳を鋭く研ぎ澄ませた。何事かと使用人達が辺りを見回す中、宵月も彼と同じ方向へと視線を投げていた。


「だいぶ奥のようですね」

「桜木の方からだ」


 開いた雪弥の瞳孔が、常人を超えた視力でもって、芝生地帯の奥に並ぶ青々と茂った桜の木を視認した。そこには腰を抜かせた男がいて、横たわる一頭の仔馬らしき肢体も確認出来た。


「――あそこに、男が一人。仔馬もいる」


 雪弥は、淡い光の輪郭を描く小さな瞳孔を、そちらへ固定したまま言った。


 それを聞いた作業服の男達が、勢いよく彼を振り返った。しかし、宵月が質問を許さないまま冷静に指示を出して、彼らが慌てて馬小屋に繋がれていた美しい毛並みをした各馬に飛び乗る。


「雪弥様、案内して頂けますか?」

「はい。それじゃあ付いてきてください」


 雪弥は視界の集中を解くと、一つ頷いてから走り出した。


 駆ける馬よりも速く、宵月と共に緑地帯を駆け抜けた。あっという間に長距離を移動し、計画的に植えられている木々の間に突入する。そこは、春の季節になると花見のためにライトアップされる『桜園』だった。


 均等間隔に並ぶ立派な桜木を避けて根を飛び越え、目的の場所に辿りついたところで、二人はほぼ同時に足を止めた。そこには異臭が漂っており、鋭い嗅覚を持った雪弥は、ある意味嗅ぎ慣れてもいるそれを察知して顔を顰めた。


 若い使用人が、ハッとしたように振り返った。遅れて到着した使用人仲間達が、馬を降り始めるのにも目を向けず、半ば足をもつれさせながら立ち上がると宵月に助けを求めた。


「よ、宵月様ッ、馬が……!」


 けれど混乱しているためか、言葉は上手く続かない。


 既に、仔馬は死骸の状態であるとは見えている。宵月が「おどきなさい」と厳しい口調で告げて、男の脇を大股で通り過ぎた。現場の光景を改めて目に留めた高齢の男と、駆け付けた馬の世話掛かりの仲間達の間に緊張が走った。


 そこにあったのは、すっかり血肉の感じられなくなった仔馬の死骸だった。苦しそうに開かれた口、身をよじるように伸ばされた四肢。水分がなくなった黒い皮が、骨に吸いつくように張りついている。


 その硬く黒ずんだようにも見える仔馬の死骸は、もう随分長いこと放置されたような印象さえあった。それを宵月が厳しい表情で見下ろす中、第一発見者となった若い男がうろたえてこう言った。


「あ、ありえない。だってこんな……朝まで元気だったのにッ」


 集った他の男達も、強張った顔で変わり果てた仔馬を見つめていた。誰もが発する言葉が見付からない様子でいた、その時――



「水分がない。血の一滴も残っていないみたいだ」



 雪弥が冷静にそう呟いた。膝を折った宵月の後ろから、例の仔馬の死骸を覗き込むその表情には、ショックの一つさえも見られないでいる。異臭の発生源が分かって、仔馬が死んだのか、と一旦頭の整理がついてせいでもあった。


 仔馬は水気のない干物のようだった。開いた口の中では舌も干からびて、薄くなった歯茎からは、歯が剥き出しになっている。触れてみると、死骸にはまだ温もりが残っており、見た目の印象を裏切らず皮膚は水分を失って硬くなっている。


 表情一つ変えず観察し、しげしげと死骸にも触れ出した雪弥を、使用人達が息を呑んで見守った。そのそばで宵月が同じように確認し始めた時、一番年長者である男が、我に返ったように「雪弥様ッ」と呼んだ。


「あなた様が、そんな事をなされる必要はないのです。これは私共で――」

「少し静かにしてもらえないかな」


 雪弥は、振り返りもせずぴしゃりと言った。


 透き通るような声とは裏腹に、言葉は高圧的な冷たい響きを持っていた。次々に口を開きかけようとした男達も、揃って黙りこむと『次期当主の弟』である雪弥の若々しい背中を見守る。


「刺し傷のようなものがありますね」


 殺気に似た空気が張り詰める中、宵月が思案げに口にして「ご覧ください」と雪弥を促した。

 そちらに目を向けた彼は、仔馬の干からびた皮膚に、大小様々な穴が数個ある事を確認した。覗きこんでみると、刺し傷はかなり深い。


「刺し位置は、どれもばらばらだな」

「そして、真っ直ぐではないようです」


 思案しながら雪弥が低く呟き、同じように考察した宵月が続く言葉を口にする。どうも手近にあるナイフといった刃物が凶器である可能性は、ないようである。


 二人のやりとりを見ていた使用人の一人が、恐怖するように肩身を狭めて、微かに震えた声でこうこぼした。


「さっきまでは元気に生きていたはずなのに、まるで、死んでずっと経ったあとのような死骸じゃないか……」


 気味の悪さを煽られたのか、男達が小さくざわめいた。それを聞いた宵月が、立ち上がって彼らを振り返ると、話題の矛先をそらすように現実的な事を淡々と尋ねる。


「この子を繋いでいた綱は?」

「えっと、それが……」


 先程、一番に報告をした若い男性使用人が、言葉を濁して気遣うような視線を向ける。そこにいたのは第一発見者である男で、彼は顔を後悔にくしゃりと歪めて答えた。


「こんな事になるなんて、思っていなかったんです。ただ、まだ小さいやつだったから、ほんの少し紐を緩くしてやっただけなんです。まさか、それが逃げ出すきっかけになるだなんて……」

「落ち着け、渡辺」


 高齢の男が、自身の責任だと感じて真っ青になっている若者の台詞を、ぴしゃりと遮った。


「あれくらいの仔馬だったら、わしらだってやっとる。でも状況からして、たったそれだけで綱がキレイに外れるとは思えない。噛んだような跡もなかっただろう」


 そこで彼が、不安そうに、宵月へ指示を仰ぐ眼差しを向けた。


「それに宵月様、小屋から脱走というのも珍しいですが、ウチの馬が敷地内で襲われた事は今までありませんでした。森の獣は、高い塀に阻まれて入って来られませんし、大型の野鳥だとしても、この死に方は――」

「一つの原因で、こうなったと考えるから不気味に見えるのでしょう。いいですか、当時の状況や環境によっても死骸の様子に変化は出ます。死後にこうなった可能性もありますから、死因については、こちらで調べておきます。仔馬の事は残念ですが、あまり自分たちを責めない事です」


 含む眼差しを受けて、高齢の男が「それもそうですね」と、自身より年下の仲間達に戻る事を促した。彼らは納得し難いような表情を浮かべたものの、宵月の説明を少し考えたのか、それもそうだなというように緊張を少し解いて、乗って来た馬に跨って引き返し始める。

 綱をゆるめた自分のせいだとする第一発見者の若い男が、肩を震わせて泣き出した。同じ年頃の仲間に気遣われて連れられながらも、彼はずっと仔馬の事を嘆いていた。自分がここに務めて初めて、出産に立ちあった馬だったのに、と。


 雪弥は膝を折り、死骸の様子を一つ一つチェックしていた。気になる部位に触れながら、その死骸の上を滑る静かな瞳が、その瞳孔にゆらゆらと淡いブルーの線を描いて殺気を浮かび上がらせる。その耳は、離れていく馬の足音を聞いていた。


 不意に、彼の口元に嘲笑うような笑みが浮かんだ。


「宵月、この仔馬は『殺されて』いる。そんなに時間は経っていない」


 形のいい雪弥の唇から、低く問い掛ける声が上がった。辺りに響いていた鳥の声が遠のき、風がピタリとやんで、草葉の囁きも異様なほどひっそりとする。


 普段と打って変わった堅苦しい口調だ。肌をチリチリと刺す緊張感が、一瞬にして場を支配していた。けれど宵月は、眉一つ動かさずに振り返ると、彼の華奢な背中を見下ろして答える。


「はい、わたくしもそう推測しております。体液は蒸発させられたのでしょうか?」

「恐らくは違うだろう、と。もしかしたら『原始的に吸い取られて』いるのかもしれない」


 雪弥は、思案の言葉をこぼしながら、知らず嘲笑とも嫌悪ともとれない様子で目を細めていた。その瞳孔の周りを、不思議な色合いの光が鈍く揺れ動く中、観察もしまいだと伝えるようにして立ち上がる。


 邪魔者がいるのなら、排除しなければならない。

 よくも堂々と、蒼緋蔵家の土地を踏み荒らしてくれたな。



 殺シテくれる。こノ牙デ噛み砕き、爪でヒき裂くのダ。


 当主とソノ一族を、脅かシテなるモノカ。我ガ手の届くウチデ、勝手な真似ナドさせはせぬ。



 殺せ殺せ全て殺しテシマエ「兄を守らなければ」殺シテクレルこの怨み忘れハセヌ「私は兄のための右腕だった」殺セ殺セ殺セ「きっと守るよ」喰ッテヤル殺せ殺せ嗚呼殺シタイ「ごめん副当主として、もっと役に立ちたかったのに」「私は【番犬】としては不完全だ、『緋サラギ様』の番犬みたいに非道にはなれない」殺サセロ「あの大きな犬は、どんな想いで死んでいったのだろうか」モット殺シタイ「兄さん、ここでさよならだ」殺す殺す殺す殺殺殺……


『全軍前へ。もし(ふくとうしゅ)が死んでも、構わず戦い続けろ。決して奴らを、当主(あに)のいるところまで踏み込ませるな』



 

 不意に、雪弥は我に返った。


 一瞬、意識が途切れていた気がする。頭の中で忙しなく『何か』を考えて思い出していたようにも感じたが、何も覚えていなくて、きっと気のせいだろうと思った。

 こんなところでぼんやりとするなんて、集中力が少し足りなくなっているらしい。エージェントとして、ようやく出来た休日で気がゆるんでいるせいなのか。


 そういえば、アメリカの特殊機関に勤めていた時、このような死体を見るのも珍しくはなかったな。


 雪弥は、ふっと思い出して記憶を手繰り寄せた。あれは時間が経ったものだったが、数時間で、身体中の水分を人為的に蒸発させられた人間の死体だった。もしかしたら共通点はないだろうかと思って、目の前の仔馬のソレと比べてみる。


「……これは違う気がするなぁ。なんというか、うーん」


 独り言のように、雪弥は思案をこぼす。その声色は、穏やかさを取り戻して高くなっていた。

 先程と違うのんびりとした表情が、微塵の緊張感もなく足元に転がる死骸に向けられている。宵月は、また吹き始めた柔らかい風が、日差しに透き通る彼の蒼とも灰色とつかない髪を、小さく揺らす様子を静かに見守っていた。


「なんだか、養分を吸い取られたみたいだ」


 雪弥は、自分が抱いた印象を口にした。次へと考えを進めようとしたところで、不自然に小さく盛り上がった土がある事に気付いて、膝を折ってそちらを覗きこんだ。後ろから宵月が、同じ箇所を観察するように腰を屈める。


 それは、硬い土で出来た、小さな盛り上がりだった。手でそっと触れてみると、中は空洞だったようでボロリと崩れてしまう。


 まるで、何かが土の中から、飛び出した跡みたいだな……?


 そんな疑問を覚えた時、雪弥は宵月に呼ばれた。視線を返したら、あちらを見るようにと指で促された。

 そこには何かを引きずったような跡があり、桜の根にも複数の傷が入っていた。立ち上がり、その痕跡を全体から注意深く辿ってみると、小振りな何かを引きずったようないびつな線は、仔馬の死骸の下でピタリと途切れていた。


「これ、ちょっと持ち上げて引きずった、みたいな感じの痕跡ですね」

「とはいえ、ざっと目測するに五メートルほどしかありません。スタート地点は中途半端でございますし、推理がし難い状況です」


 引きずられたような跡には、所々乾燥していない小さな血痕も残されていた。雪弥が「ふむ」と訝しむそばで、再び宵月が膝を折って仔馬の様子を確認する。


「首の骨が折れていますね」

「だから僕は言ったじゃないですか、殺されているって」


 仔馬の首には、見落としてしまいそうな薄い締め跡が残っている事を、雪弥は先程確認していた。触れてみると骨や組織は壊れており、かなりの力で食い込んだのが分かる。


 不意に、ざわり、と雪弥の中の得体の知れない何かが揺らめいた。するべき事を、と血に流れる遠い記憶の彼方から問いかけるような、理解しがたい感情の波が胸の片隅で蠢いた気がして、不思議に思って自分の胸元に触れる。


「蒼慶様のもとへ戻りましょう」


 立ち上がった宵月が、そう告げた。

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