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最強エージェントは休みが欲しい【第3部/現代の魔術師編(完)】  作者: 百門一新
第1部 学園ミッション編~エージェント4~
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第16話 三章 夜のゲームセンターでの遭遇

 白鴎学園にある中庭を廊下の端からちらりと眺め、雪弥は暁也と修一が矢部に連行されるのを見送ったあと帰宅した。


 夜に町への探索を決行することに決め、風呂に入って缶ビールを一本飲んで後そのまま仮眠を取った。九時半に設定した携帯電話のアラームが鳴るまで、ぐっすりと就寝した。


 目覚めた夜の九時半は、窓が開けられたベランダから、今にも雨が降りそうな湿気の匂いが流れ込んできていた。汗が張り付くような心地悪さがある。外へ出ると風はなく、生温かく絡みつくような空気が満ちていた。


 雪弥が寝泊まりしているマンションは、第二住宅街にあった。茉莉海市は町と白鴎学園を置いて、四国山地へと続く北側に高級感ある一軒家が多い第一住宅街。海に近い南側にマンションなどの建物が並ぶ第二住宅街を置き、立て直された一軒家と鉄筋アパートが多く並ぶ第三住宅街が、町と学園に浸透するように散りばめられている。


 第二住宅街を抜けるとコンビニと判子屋を挟んで大通りが始まり、一本道はそのまま第一住宅街へと続く。茉莉海市は開拓地のため平坦であるが、白鴎学園はやや窪地となっている。


 第一住宅街の奥に位置したゆるやかな坂道に建てられた市役所や電力、水道局や公民館は大通りからも拝むことが出来るが、霜や霧がない晴れた日に限定されていた。


 一本道の大通りは、買い物客などで賑わう商業地帯である。建物は三階建ての高さまでとされており、通り中央の交差点にある「茉莉海ショッピングセンター」と看板が取りつけられた総合店が、最も固定客を持っていた。


 茉莉海市唯一のショッピングセンターは、一階に食品館、二階が電化製品、三階に雑貨や衣類用品が販売されていた。同じ広さの敷地を持った店に、パチンコ店とカラオケ店がある。


 居酒屋と飲食店に挟まれた二つの店の向かいには、小さなゲームセンターが置かれていた。大通りには年齢層に応じた衣類店と雑貨店が多く並び、八百屋などが通りの南側一帯を占めるように向かい合わせで続く。



 マンションを出た雪弥は、コンビニを通り過ぎて大通りへと足を踏み入れた。商店街へと進むと、客を呼び込むため自慢の商品を宣伝した声が飛び交っていた。



 九時四十五分を回った歩道は人の流れがゆるやかで、シャッターが降りた商店も目立った。道路には普通乗用車やトラックが行き交い、時々若者が乗った車体の低い軽自動車や、改造されたビックスクーターが響くエンジン音を上げて走り去っていく。


 少ない歩行者の中に溶け込んでいた雪弥は、緑と白のフードパーカーにスポーツウェアという軽装だった。


 少し生地の厚いパーカーは、内側に装着したシルバーのナイフと腰にある拳銃の存在を隠している。顔を隠すように深くかぶった帽子は、本人の証言しだいでは高校生や大学生にも見えなくはない雰囲気をまとうが、雪弥本人は「さすがに未成年に見えるほどの効果はないだろうなぁ」と思っていた。


 シャッターが多い店を越えると、大通りの交差点に茉莉海ショッピングセンターが腰を下ろしていた。東側に小さな雑貨店や若者向けの衣類ショップがあるが、どちらも夜十時の閉店準備が始まっていた。


 客足が落ちついた焼き肉屋やファミリーレストランを挟み、北側に向けて小さな居酒屋が並ぶばかりだ。そこには、陽気に顔を赤らめた中年の男性が数人、隣の小さなスナックに連れ添って入っていく光景も見られた。


 雪弥はショッピングセンターを通り過ぎると、カラオケ店とパチンコ店に面するゲームセンターへと向かった。十八、九歳から二十代の若者が店の前で談笑しており、中からは騒がしいゲーム音が漏れる。


 ゲーム店の開け放たれたガラス扉には、「深夜二時まで営業」と印字された紙と従業員募集広告が張り付けられていた。雪弥がまずそこに目をつけたのは、「一番若者が集まりやすい場所だよな」と楽観的に考えてのことで、ほとんど勘によるものだった。


 ゲームセンターにはたくさんのゲーム機が置かれており、店内には少年や青年たちの姿が目立った。リズムゲーム、レースゲーム、格闘ゲームに若者一同が熱を上げ、小さなプリクラ機器が三台並んだ場所からは少女や女性の足が覗く。


 様々な商品内容に別れたクレーンゲームは、男女問わず挑戦している様子が見られた。もっぱら注目を浴びていたのは、通信機能のついた対戦ゲームである。暇を持て余した観客が、それを遠目で眺めたり真近で応援するなど、奇妙な一体感が生まれていた。


 大半の客が数人連れで店を訪れ、ゲーム機の前に集まって楽しんでいる光景が目立った。個人で来ている若者は見られず、時々やかましそうな顔をした大人たちが通り過ぎながら、ゲームセンターの入口を覗きこんでいくばかりだ。


 雪弥は「帰ろうか」と話しながら擦れ違った少女たちや、お目当てのゲーム機へと移動する若者を避けながら店内を進んだ。


 鼓膜を叩くような音が溢れ返り、通常なら話し声を聞くことも難しい空間だったが、雪弥の聴覚では特に問題にはならなかった。クレーンゲームで人形ばかりとっていた中年男性に、三人の少年が「おっさんすげぇ」と感心する声も、それに対して男性がろれつも回らずに「そろそろ帰んな、もう十時前だぞ」といった言葉もきちんと聞こえていた。



「理香ぁ、こっちに来いよ」



 溢れる音の中から、ふと聞き覚えのある名を耳にして雪弥は立ち止まった。


 帽子を深くかぶり直して辺りを見回した。もう一度「理香ぁ」とだらしない口調が聞こえて、彼は音の位置を特定した。


 店内の奥にあるレースゲームに腰かけ、誰かを呼ぶように振り返る一人の男がいた。第三ボタンまで開けた赤いシャツに、派手な光沢の入った紫のスーツを着ている。彼は「スピードX」というレースゲームの肘置きに手を掛け、誰かを手招きしている様子だった。


 男が座っているゲーム機は、レースのリアリティーを増すため車体が傾いたり振動もするタイプのもので、暗室に大きめのスクリーンがついていた。本物のギア車と同じような操作が必要なため大人に人気がある。奥には他にもバイクレースゲーム、通信可能な麻雀ゲームなど大人向けのゲーム機が並んでいた。


 雪弥はストラップ人形が入ったクレーンゲーム前に滑り込み、ガラス越しに男を見つめた。


 男は細く伸びた胴体をしており、くすんだ肌色の顔の頬はこけ、剃られた眉は少しばかりしか残っていなかった。顔に張り付いた細い瞳は釣り上がり、薄ら笑いを浮かべる口からは覗いた歯は、今にも折れそうなほど小さい。


 男の瞳孔はどこか不安定で、笑い方もひどくふわふわとして、軽く酔ったような印象を与えていた。それはよく見慣れた薬物常習者のものに似ていて、溶けた歯をみる限り間違いなさそうだ。


 雪弥がそう思ったとき、一人の少女が彼の脇を通り過ぎて行った。彼女はそのまま男へと近付き、「どうしたのぉ?」と甘えた声を掛ける。


 少女の身長は、百五十センチほどだった。かなり痩せており、背中部分が大きく開いた丈の短いキャミソールからは、肉のなくなった皮膚が背骨を浮かび上がらせている。短いスカートから覗く足も、筋肉や脂肪がすべて削げ落ちたように細かった。ぼさぼさに痛んだ茶髪は、細い首を露わに頭部で一まとめにされていた。


 少女はブランドマークが装飾された赤い鞄を手に下げており、耳につけていた金の大きなピアスが光りにきらめいていた。膨らみもない胸部と腰回りは、年頃の発育を感じさせないほど幼い。


「……あれが、二年の理香か……?」


 雪弥は少女の後ろ姿を眺めながら、ゲームセンターの客に溶け込むように、ポケットから取り出した小銭をクレーンゲーム機に入れた。


 ボタンで作動したマシーンの向こうで、男が露出した少女の白い肩を引き寄せてキスをするのが見えた。顔を正面から確認するチャンスを伺っていた雪弥は、不意にこちらを振り返った少女を見て動揺した。思わず手元のボタンを押してしまい、クレーンマシーンが下へと腕を伸ばして宙を掴む。


 幼さが残る少女の顔はひどく荒れ、何重にも塗られた厚い化粧が不自然に浮いていた。骨と皮だけの頬には、まるでそんな事は知らないとばかりに笑みが浮かび、ぼんやりと夢見心地な瞳孔は開いたままどこか遠くを見ている。振り返ったときちらりと覗きそうになった下着のそばには、複数の紫の斑点があった。


「理香、こっち来いよ」


 男が再び名を呼び、理香と呼ばれたその少女がレースゲームへと向き直る。


 雪弥が操作していたクレーンゲームは、人形の収穫もないまま元の位置に戻った。彼が半ばじっとして動かないでいる様子を勘違いしたらしく、それを後ろから見ていた二人の青年が不憫に思ったように「なぁ」と声を掛けた。



 まさか話し掛けられるとは思っていなかっただけに、雪弥は驚いて振り返ってしまった。そこには、眼鏡を掛けた青年と短髪の大きな体格をした青年がいて、しかし彼らは自然な表情を浮かべて「よっ」と改めて挨拶する。



「お前、クレーンゲーム初めてなの?」


 オレンジの短髪頭の大きな青年が言い、雪弥は顔を見られないよう視線をそらしながら「まぁね」と答えた。青年のタンクトップの下からは、鍛えられた筋肉が浮かび上がっている。


 年頃は二十歳前後だ。もしかしたら大学生か、近くの専門学生である可能性もある。彼は何かしら運動でもやっているのだろうか、と一人推測する雪弥に、その青年の方が続けてこう言った。


「コツはさ、引っかけるか落とすか、だぜ」

「引っかけるほうが確実だけどね」


 彼が言ってすぐ、眼鏡を掛けた青年が口を挟み、ほどなくして肩をすくめた。


 背丈は雪弥と同じくらいで、細い黒縁眼鏡の奥にある細い瞳は穏やかで冷静であり、天然パーマの髪も手が加えられた様子はない。隣の陽気な筋肉青年に比べると、眉さえいじられてはいない真面目そうな風貌だった。


 すると、大柄で活気に満ちた瞳をした方の青年が、こう言った。


「お前、大学生? 俺、白鴎学園の大学の三年、()津原(づはら)(けん)。で、こいつは交流のない学生とも成績トップを争ってる()()

「別に、意識して争っているわけじゃないって。変なこと言うなよ」


 眼鏡の青年、里久が軽く鴨津原を睨みつけたあと、こちらへと視線を戻して人懐っこい笑みを見せた。


「突然ごめん、なんだか見ていられなくなったというか…………」

「いやぁ、こんなに下手くそな奴は里久以来だぜ」

「煩いよ」


 私服だとさすがに高校生設定は厳しいもんな……


 雪弥は、引き攣りかけた口元にどうにか笑みを作っていた。相手が調査対象の大学生という事もあり、どうしたものかと思いながら、ひとまずは話を合わせるべく「雪弥です」とぎこちなく答える。


「隣町の専門学校が休みだったから、友だちとカラオケに入っていたんだ。その、うっぷん晴らし? えぇと、そう、たまには勉強の息抜きでもって思って……その後別れたんだけど、ちょっとゲーセン寄ってみようかなと…………」


 若い子って、よくゲーセンっていうよね?


 そう悩む雪弥に気付かず、運動派にしか見えない大柄でたくましい鴨津原が、大きな声で笑った。


「確かに、うっぷん晴らしにはもってこいだな! 俺もよく行くぜ。こいつなんて、大学生なるまでゲームもカラオケも経験がなかったから、初めて知った時はびっくりしたんだぜ」

「へぇ、珍しいね」


 雪弥は話しながら、ちらりと理香と男へ目をやった。二人はレースゲームを始めており、しばらく動く様子は見られない。


 大学生に話を聞ける絶好のチャンスだと思うと、今の状況は都合がいいのかもしれない。そう冷静に考えながら戻した視線の先で、眼鏡の里久が肩身を狭めながら「うちの親は厳しいから」と口ごもったとき、雪弥は遠慮がちに尋ねてみた。


「白鴎学園って、確か附属の高校があったよね?」

「いんや、外から来る奴らもいるぜ。俺は高校からだけど、里久は高知市からこっちに移って来て一人暮らしだ。俺の親がそこの居酒屋やってて、結構余りもん出るからおすそわけしてんの」


 鴨津原は「お前今からでも編入しね? なんか気に入ったわ」と続けたが、雪弥は困った笑みで応えて首を横に振った。里久がすかさず彼に「ちょっと黙ってろ」と一喝し、クレーンゲームの基本的な操作方法を説明し始める。


 雪弥は、五分とかからない話の間、耳と神経を理香たちのほうに研ぎ澄ませていた。里久の言葉はほとんど入って来なかったが、「ま、こんな感じ。分かったかな」と里久が話を締めくくったとき、「以外に簡単なんだってことがよく分かったよ」と自然な相槌を返した。


「まっ、一番簡単かもな。商品によるけどよ」

「そろそろ行こう、健。俺は構わないけど、お前はこれから店の仕込みを手伝うんだろ?」


 里久が思い出したように腕時計を見て、「そういえば帰る話をしていたところだったもんな」と付き合ってくれた友人を気遣うような気配を滲ませた。それを見た鴨津原が、途端に笑って「そうだった、今日はお前の気晴らしに付き合ってたんだっけ」と言った。


 互いにタイプは違っていたが、とても良い関係を築いているらしい。雪弥はそれを少し微笑ましく思って、彼らが「じゃあな、頑張れよ」「頑張ってね」と言い残して去っていくのを、手を振り返して見送った。


 それにしても、突然だったなぁ。


 雪弥は大学生二人組を思いながら、さて奥にいた理香と男はどうなっただろうか、と意識をそちらへ戻した。すると、レースゲームに座っていた男が立ち上がり、腕に理香をはべらせて、こちらへ向かって歩き出すのが見えた。


 客の一人を装ってゲーム機に小銭を入れる雪弥の横を、男と理香が通り過ぎた。クレーンゲーム後方にあるシューティングゲーム機へお金を入れ始める様子を、背中越しに神経を集中させて窺いながら、雪弥はクレーンゲームのボタンを押した。


 クレーン型の機器が動き出したとき、ふと理香たちに駆け寄る人影があった。ちらりとそこへ視線を向けて、白鴎学園高等部の制服を着た一人の男子学生だというのを確認してから、すぐに目を戻して最後の操作ボタンを押す。



 三人の人間を薄く映しだしたガラス越しに、クレーンが人形へ向かってゆっくり落下を始める中、その少年に気付いた理香がすぐに黄色い声を上げた。



「えへへ、常盤(ときわ)先輩じゃないですかぁ」


 理香は二年生である。つまりやってきた少年は、高等部の三年生であるらしい。


 そう把握する雪弥の正面で、ガラスの中のクレーンが、小さな人形を一つ掴んでゆっくりと持ち上げる。


「おう、どうした常盤。(ブツ)が切れたのか?」

「シマさん、声が大きいですよッ」


 常盤と呼ばれた少年が、周りの目を気にしたように焦った声色で男を制した。雪弥が操作したゲーム機では、テルテル坊主に小さな手足をつけたような白い人形が、クレーンで移動を続けている。


 誰もがゲームに夢中らしいと確認した常盤が、一転したように自信の窺える顔で「映画館の方にいなかったから、どこに行ったんだろうって捜しちゃったよ」と、男と自分はタメ口で話せる信頼関係である、と言わんばかりの口調で話し始めた。


「大学の方は順調だけど、こっちは全然駄目だね。声を掛けようにも、そんな連中なんて一人もいやしないし、二年生くらいにいないかなと思って回ってはみたけど、そういうのには興味がなさそうで」


 すると、男の方がゲームを理香に任せて、彼へと身体を向けた。


「高校じゃあ、やたらと声を掛けるのもまずいだろ。そっちには理事が帰ってきてるしな。若いのがいいと言われているが、大学生でも十分若いだろ。お前は話した通り、明美(あけみ)と一緒に理事の行動をチェックして、何かあれば富川(とみかわ)学長に知らせろ。ブツは配れそうなら配れ。とくにかく約束通り、三十人以上は集めなきゃいけねぇからな」


 落ちてきた人形を拾い上げた雪弥は、反対側へと回ってガラス越しに三人を見た。


 シューティングゲームをする理香と、シマと呼ばれた紫スーツの男の隣には、やはり白鴎学園高等部の制服を着た男子生徒がいた。常盤という少年の顔に見覚えはないが、白い肌が目を引く生徒だった。


 黒に近い茶髪は癖がなく、薄い顔立ちは大人しそうな印象を覚える。しかし、長い前髪の間から覗く一重の切れ長な瞳は、怒りや不満を隠し持っているようにも見えた。


「常盤、物がなくなったら必ず俺たちか富川学長に言えよ。絶対、青い奴は飲むな」


 どこか含むように告げたシマは、面白そうに笑っていた。常盤が「分かってますよ」と反論するように言いながら、辺りを慎重に伺ったあと話しを切り出す。


「で、あいつらからもらったあの青い奴、いったい何なのさ? 効き目が少ないし効果も短い、でも考えようによっては便利な物にも見えるんだけど」


 伺われたシマが「さぁな」と、肩をすくめる。


「取引対象に飲ませろとしか言われてねぇし、俺らにも分からねぇよ。ビジネスで、ずかずか尋ねるわけにゃあいかねぇだろ? ただ、『絶対に飲むな』と言われたんだ。何か裏があるんだろう。俺ぁ青いやつを受け取るとき、あいつらの鞄に赤い別の物があることにも気付いたぜ。何に使うのかは分からねぇが、――そうだな、一言で片づけるんなら嫌な予感がする、だから絶対にやるなってことだ」


 常盤が、シマの言葉を聞いて「それこそ納得出来ないし分からない」というような顔をしたが、理香がゲームを一緒にやりたいとシマにせがんで、話しは終わりになった。



 常盤が苛立ったようにレースゲームを始めたタイミングで、雪弥はその場を切り上げる事にした。ストラップの紐がついた小さな人形を、そのままクレーンゲーム機に置いて帰ろうとして、ふと手を止める。


 どのキャラクターかも分からない、その人形の間抜け面を見ていると、なんだか愛着が湧いて連れて帰る事にした。パーカーの腹部についているポケットにしまい、そこに両手を差しいれたままゲームセンターを出る。


 歩き出した雪弥は、使い慣れた携帯電話をポケットから取り出しながら、建物の裏手へと回った。

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