7
昼の休憩時間が終わりに近づくにつれ、食事を済ませた人たちはがたがたと席を立ちはじめる。
「じゃ、授業いこっか」
とミトさんは言い、三人は食堂の出口に向かった。オモヤさんは出口のガラス扉を出たあたりで立ち止まり、ふたりに手を振り、別れた。ほどなくして廊下の端で立ち尽くしていたひとりの男子がオモヤさんに近づき、ふたりは何かを話しながらガラス扉の向こうへ消えていった。
「テツ」
「なんだ」
「この前言った夢の話なんだけど」
「また夢の話か」
「テツはこれから授業ないの?」
「今日はない。お前は?」
「おれもこの次の次だけ」
「そっか」
「さっきの」
「……だよな。それっぽいよな」
テツは徐々に声のトーンをあげながら、オモヤさんちょっとかわいかったんだけどなぁと大袈裟に振る舞い、頭をうなだれてみせた。
またここに来ると、砂山の数が増えていた。
あたらしくつくられたものはおおきくなく、みっつの砂山を囲うようにちいさな砂山がいくつもつくられていた。これをつくった記憶はないし、こんな風につくろうとも思わない。
夢だからどんなことでも起こるのかもしれないとおもいながらも、不気味で、怖くなった。
ぼく以外にもだれかがいるのかもしれない。
そう考えると、腑に落ちた気持ちになった。同時に、そのだれかが今もおれをみているのかもしれないとおもうと得体が知れず、気味がわるくなった。隠れるように砂丘の影に身を寄せ、様子を窺った。
砂丘の上や遠くの景色をじっと眺めてみても、人影はどこにも見当たらず、動いているものもなにもなかった。
静止画のように変化のない砂漠の景色にしびれを切らし、
「おーい」
と声をだし、呼びかけた。声をだそうとして、はじめてじぶんの声がでないことに気がついた。
「夢だもんな」
ぼくはなんだか気が抜けて、口をぱくぱくさせながら、声にならない声をつぶやいた。