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10階書籍フロアをまわり、旅行関連の棚を探した。国内から海外までのガイドブックや旅行記などの並ぶ棚を見つけ、八所薫のプロフィールに書かれてあったB県のガイドブックを探す。棚は土地毎にまとめられ、B県のガイドブックは三冊あった。一冊ずつ目次をたどり、パラパラとページをめくって、砂丘の記事を見つけて読んだ。
記事を読むうち、すこし懐かしい気持ちがした。小学生の頃、祖母といっしょに日帰りのバスツアーで砂丘にほんのすこしだけ寄ったことを思いだした。
あの日のバスツアーでは、砂丘への観光は行程に含まれていなかった。数か所の観光名所を短い滞在時間でまわり、ほとんどの時間は食事と土産物のショッピングに費やされた。
砂丘は昼のメインであるカニを振舞う旅館の近くにあった。バスが旅館に着く前、バスガイドはおたのしみのカニは食べ放題であることを告げ、近くに砂丘もあるので食事時間の間に行きたい人は寄ってみてくださいね、と言った。
旅館に着き、和服を着た人が食べ放題のルールを説明し終えると、みんなはもくもくとカニを食べ始めた。
ほとんどの人は窓の外にちいさく見える砂丘には関心を示さず、カニの硬い殻を剥ぎ、やわらかい身をかき出すことに集中していた。
ぼくは砂丘を気にしながら、真っ赤に茹だったカニの殻を剥ぎ、細長いカニ用のスプーンをカニの手足に突っ込み、身をほじり、手がカニの汁でべたべたになるとフキンになすりつけ、食べた。食事の終わる十五分前になり、ぼくは外へ出た。
旅館を出るとぼくは走り、道路を渡った。道路の向こうには、砂地に生える雑木林が広がり、砂丘へ向かう階段が見えた。運動靴のなかに砂が入った。息を切らせ、階段をあがると、海と砂がみえた。
いつかのテレビCMで見たような、視界いっぱいに広がる一面の砂を期待していたが、砂丘はおもったよりも狭く、観光客が点々と歩いていて、なんだこんなもんかと気持ちが落ち着いていくのを感じた。
この砂丘が、夢でみたあの街並みや砂漠と関係があるのかはわからないが、展示された写真をみてから、ここへ行けば何かが見つかるような期待があった。そうであって欲しいと思いたかった。




