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おなじ夢をみている  作者: メイツル
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 展示スペースの入り口には「八所薫作品展~千夜一夜~」と書かれた白いボードが立てかけられ、下半分には先ほど見たものと同じ広告が貼られていた。

 催事場のフロアは中央を仕切りで分けられ、左手前の半分には八所薫の写真が展示され、右奥の半分には別の複数の作家の絵画が飾られていた。ぼくは左手前の写真の展示ブースに入り、白い壁に等間隔に展示された作品を順番に見てまわった。

 入り口からすぐのところにモノクロの砂漠の写真があった。風が吹いたあとの風紋の残る穏やかな砂漠の風景だった。なだらかな砂漠の奥に地平線がみえた。地平線を眺めていると一瞬、砂漠と空の境界がぼやけたようにみえ、ぼくは身体がよろめかないよう足に力を入れ、バランスをとりなおした。

 モノクロの砂漠の風景、風紋の写真が数枚続き、二枚の太陽と砂漠の写真に目がとまった。砂漠と空の写るモノクロの風景のなか、太陽の部分だけが赤く色付けられていた。その隣にも同じ構図の写真が展示され、太陽の赤く色付けられたところには、薄黄色の月のような色が塗られていた。

 ぼくは一歩下がり、二枚の写真を見比べた。見比べれば見比べる程に、砂漠の上に浮かぶそれは太陽にも月にも見え、朝なのか夜なのか判別がつかなくなった。見れば見る程に不思議で奇妙で、不気味におもえた。

 次の写真では地平線に街のような蜃気楼が浮き上がり、そこには霧のような青白い色が吹きつけられていた。また次の写真では砂丘の写真の周りに額のように植物の蔓のカラー写真が貼りつけられていた。そのあたりからは徐々にカラー写真や油絵、水彩画、雑誌の切り抜き等がモノクロ写真に複数貼られはじめ、ぼくにはどういうものかわからないような混沌とした作品が続いた。フロアをぐるりと一周観終わると、難しい英文を訳した後みたいに頭がぐらぐらした。

 ちいさく息をつき、中央に置かれたソファとガラス製の机の上のA4サイズの紙の束に目を遣った。来場者への配布用らしきその用紙には、今回の展示の告知と写真家のプロフィールが書かれていた。

 コンテストの入選履歴や活動の経歴等が箇条書きに年表で載せられ、その下には今回の展示についてのコメントが載せられていた。

 そこには、幼い頃に祖母によく近所の砂丘へ連れられていたことが、砂漠の写真を撮るきっかけになっているのかもしれない、といった事が書かれてあり、欄外にはA県で生まれ、父の転勤により、父の生まれであり祖父母のいるB県へ引っ越し、祖父母と一緒に住み始めた、との補足があった。

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