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彼女はきょとんとして、椅子に座ったまま窓の外の鳥を見ていた。巨大な鳥は雑木林を飛び去ろうとしている。
あの鳥を追いかければ、この夢のことが何かわかるかもしれない。そう思うと同時に、あの巨大な鳥がどこへ向かおうとしているのか気になった。
ぼくは彼女の手を引き、カフェの外へ出た。離れても尚、おおきく見える鳥のうしろ姿を追った。鳥がおおきく羽ばたく度、周囲の電線が千切れそうなくらい、ガタガタ揺れた。
彼女はぼくが手を引くまま、左手で白いワンピースの裾を持ち上げ、走りにくそうにしながら付いてきてくれた。一人で何もわからない街を走るのは不安があったし、彼女だけ残してカフェを出るのには抵抗があった。たぶん、鼻のしっかりとしたこの彼もそうするだろう。
住宅街を走り、ちいさな公園を抜け、おおきな川に架かる橋を渡った。橋の向こうには長いアーケードのある商店街に続き、商店街に入ると巨大な鳥は頭上のアーケードの向こうに隠れ、影だけが映っていた。
ぼくらは誰もいない商店街を頭上を見上げ、影を追いかけ走った。
アーケードを抜けると三階建て程のスーパーマーケットがあった。
スーパーマーケットの周囲は砂で覆われ、巨大な鳥はスーパーマーケットの向こうに飛んでいくのが見えた。
スーパーマーケットの裏にまわると、街がスーパーマーケットを境に途切れたように、砂漠だけが広がっていた。
巨大な鳥は翼を休めるように両翼をおおきく広げ、滑空しながらまっすぐ飛んでいた。
あの鳥は夢の境目を超えて飛んでいるのかもしれない。
砂の上に立ち、振り向くと彼女は息を切らせていた。ぼくの手をほどき、砂の上に手をついた。
立ち止まったまま離れてゆく巨大な鳥をみつめた。彼女のぜえぜえと息のあがった苦しそうな姿をみると、たくさん走らせた事に気が引けたが、彼女にとっては責任はおれではなく、この鼻のしっかりとした男なのだとおもうと気が楽になり、同時に鼻のあたりをさすりながら、この男としてではなく、自分として、ずっと走らせて悪かったと伝えられたらともおもった。




