18
オレンジ色の裸電球がカフェのカウンターをぼんやり照らしている。壁側の全面の窓の向こうに見える雑木林は太陽の日差しをうけて色濃く、ざらざらと緑の葉を揺らしている。
「そういえばね、変わった夢の話で、いろんな人の夢を渡り歩いてる人がいるって記事、みたことがあるよ」
セキさんは言った。
彼女は以前と同じように、窓側の二人用の座席に座り、ぼくの顔を見て、やさしく微笑んでいる。彼女の瞳はすこし青みがかっていて、ぼくはいつかの夏に飲んだラムネのなかのビー玉のことをおもいだしていた。
「いろんな人が夢のなかで、同じ人を見た事があるってこと?」
「うん。そうみたい。詳しく記事を読んだわけじゃないんだけど、共通した顔を覚えていたとかそんな話だったかな」
「だれかの夢と夢がつながっているかもしれないってことか」
「お互いの夢を見比べたわけじゃないから、たまたまなのかもしれないけれどね」
ぼくが彼女の瞳を覗きこんでも、彼女は目線を逸らさないでいた。ぼくは彼女から目を逸らし、手元のコーヒーカップの中を見詰めた。
真っ黒いコーヒーの色でぼくの瞳の色はわからなかったが、以前の夢と同じように、ぼくではない彼の穏やかな瞳と見慣れないしっかりとした鼻が映っていた。
「もしも、人の夢がどこかで繋がってるんだとしたらなんだか夢がある」
「夢だけに、ね」
「うん」
「もし、いつか私の夢が君の夢とつながって、そこに私が出てきたら、その時は教えて」
セキさんは笑い、空になった丼を載せたトレーを持ち、席を立った。
彼女がぱくぱくと何かを話し、微笑んだとき、窓の外の雑木林が風で揺れた。次第に揺れはおおきくなり、緑色に色濃く茂る樹木は、左右におおきくしなり、ばさばさと乱れはじめた。
窓の外が陰り、空に大きな影が見えた。ぼくは窓に顔を近づけ、空を見た。大きな翼を持った鳥が両翼を荒々しく広げ、羽ばたく度、雑木林は激しくしなった。
「なんだあれ!」
彼女に窓の外の異常な光景を指差し、ぼくは叫んだ。見た事もない巨大な鳥が空を飛んでいることに驚き、戸惑い、混乱した。




